手紙を閉じると、涙が堰を切ったようにあふれてきた。夢はもう自分がこの難関を通過できないことを予感していたのだろうか?私は自分が恨めしく思われた。彼女は希望を持って帰ってきたのに、無念さを残して別れることになってしまった。どうして私の愛はこんなにも利己的なのだろう。私はほんとうに彼女を愛していたのだろうか?私がいちばん愛していたのは、実は自分自身ではなかったのか。夢はずっと私を受け入れてくれていた。それなのに私は、自分がえらいと思っていた。自分が彼女に幸福を与えている気になっていた。私は世界を創造した神だとでも言うのか?ちがう、何から何まで全部ちがう!

 私は赤ん坊をその男に渡した。彼が恐る恐る赤ん坊を抱きかかえるのを見て、彼ならこの子をしっかり育てられると思った。私は別れ際に、最後の一目赤ん坊を見た。彼女は幸せそうに夢を見ていた。夢に似てとてもきれいだった。でも、彼女には平凡に生きてほいと思った。彼は
 「心配しないで。ボクが彼女を幸せにします。彼女を平凡に幸せに育てます!」
 と真面目な顔で言った。
 私は彼の瞳の中に誠実さを見て取った。
 「あなたを信じるわ。」
 心の中では
 「さよなら、夢、さよなら、赤ちゃん。」
 と呼びかけていた。

 私はひとりでチベットに向かった。これは私と夢の“夢”だったが、私ひとりで実現させることになった。私はチベットに留まり、教師になるつもりだった。これでやっと自分の世界が持てる。私たちの世界だ。

 ポタラ宮殿前の広場で、私はその透き通るくらいに青い空を見上げた。空では夢が私に向かって微笑んでいた。そして私はそっと言った。
 「待っててね。生まれ変わるまで。」

 ひとりのチベットの子供が私の袖を引っ張って、ぎこちない中国語で、無邪気に尋ねた。
 「おばちゃん、誰と話してるの?」
 「おばちゃんはね、木の葉と話してるんだよ。木の葉はね、今日は天気がいいね、ピクニックにピッタリだよ、って言ってるよ。」

 その瞬間、涙がどっとあふれた。

written by 默默般奔pao
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