≪老外【2】≫

2003年11月16日
  平安保険公司ビルの前に着き、バスは停まった。運転手が老人に降りるように怒鳴ると、老人は小声で言った。
  「まだ6元が・・・」
  しばらくすると、ほかの乗客たちが催促し始めた。運転手には大声で怒鳴り、なかなか降りようとしない老人を責めた。
  「おいおい、僕が先につり銭をあげるよ。シンセン大学で降りるから、ほかの人からお金を集めておくよ。」
  突然ある人が騒ぎを静めた。私はこれはいい方法だと思った。話している人を振り返って見てみると、なんと若い外国人だった。彼は中国通らしく、普通話も流暢だった。
  老人は彼が取り出してくれた6元を受け取ると、丁寧にお礼を言ってバスを降りて行った。
  やっとバスは再び走り始めた。乗客たちはみなため息をついた。奇妙なことに、八卦嶺を出てから、ずっとひとりの乗客も乗って来なかった。シンセン大学に着くまで、その外国人は1元も取り戻すことができなかったのだ!
  バスは停まり、彼はバスを飛び降り、行ってしまった。
  「頭がおかしいんじゃないのか!」
  外人さんが遠のいてから、運転手は彼の後姿に向って言った。乗客たちも続いて言った。
  「けっ、外人というのは頭がおかしいものさ!」
  その一瞬、私の心は突然動いた。多くの外国にこびた言い方は元来嫌いなのだが、そのとき私は思った。外国の月は中国ほどきっと丸くはないのだろうが、少なからぬ外国人の心はほんとうは、私たちの心より丸いのではないか。−−−私たちの中の少なからぬ者の心は、名誉と利益の誘惑で欠け始めているのではないか。欠けたものは善良さ、同情などの昔からの美徳ではないのか。あの外国人は頭がおかしいのでは決してなく、おろかなのでもない。彼が失ったのはたかだか6元。得たものは老人のこの上のない感激と自らが人を助けたという喜び。名誉と利益の計算が美徳の得失を上回ると考えている人の心のほうがほんとうは「おかしい」のだ。おそらくそういう欲は、深いところまで心を侵し、どのような薬でも治すことができないだろう。
  善良な行いをした人をあざ笑ってはいけない。そのような行為は私たちの欠けた心を治してくれる処方箋なのだから。

written by Amy
http://eggtown.gaiax.com/home/amycn

中国語原文
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Hinoki/4558/youyitian/laowaidoc.htm

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

日記内を検索