夜中の0時45分。

  窓の外の風雨は激しさを増していた。阿霧はどこで飲んだくれているのか、まだ帰ってこない。阿霧は私の大学時代の友達で、最近失恋したばかりだ。その日の夜中、荷物を担いで私のところに転がり込んだ―――相手は奥さんのいる男、ほしいものは何でも手に入れ、飽くことのない貪欲さ、最後にはボロ雑巾のように捨てられ、そ知らぬ顔で振り向きもせずに去っていった。

  そして私は静養のために友達に青澳湾でひとり用の部屋を探してもらい、閑なときは地方紙に原稿を書いていた。彼女は休暇を取って私のところに来た。ひとつには気晴らしのため、もうひとつには避難場所を求めて―――彼女にとってはこれは大きな災難でからだじゅう傷だらけ、心は木っ端微塵になってしまったのだと言う。

  私はパソコンの打ち終わったばかりの原稿を保存し、背伸びをし、歯でも磨いて寝ようと思っているところだった。

  このとき、ドアのベルがなり、私はスリッパをひっかけてドアを開けた。そこには酔っぱらった阿霧が男の肩によりかかっていた。

  「あらぁ阿霧、また酔っぱらっちゃったのね。」私は首を振った。その男は私が阿霧を支えて応接間のソファーまで連れて行くのを手伝ってくれた。私は阿霧の靴とコートを脱がせた。洗面器に水を入れて彼女の顔を拭いて酔いを覚ましてやろうと思っていると、突然その男が応接間の隅に立っているのが目に入った。彼は明かりを背にしていたので顔ははっきり見えなかった。私はあまり深く考えていなかったし、阿霧の私生活には興味がなかったのだが。

written by 草戒指
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