大雨が注ぐように降っている。

  彼はドアを開けて出ていってしまった。私は窓の前に立って、彼が雨の中を道端までヨロヨロと歩いて行って、タクシーをまっている、その様子を見ていた。雨の日のタクシーは忙しくて、彼は雨の中で5分待っても車を拾えなかった。

  「信寧、信寧……」私の心は痛み出した。私は傘を探して下の階へ走って降りていった。これが私と信寧の最後のチャンスだと思った。今度は昔のけんかと違って私たちはすでにお互いをこれ以上ないほど傷つけていた。

  信寧はもう全身びしょぬれだった。からだじゅう震えていた。彼を知ってかなりになるが、こんなに冷え切って、こんなに脆くなってしまった彼を見たことはなかった。私はしっかりとからだを彼のからだにすり寄せた。右手で傘をさしていた。彼の左手は私の右手の上になって、しっかりと握りしめられていた。私の長い髪は雨風に吹かれてもつれあい、傘をさしていると言っても形ばかりであった。全身だんだんと水浸しになっていった。私は目を閉じて心の中で祈った。「信寧、もしあなたが今“愛している”と言ってくれたら、私はあなたといっしょに行くわ。どこへ行こうとも、地位なんていらない、仕事なんていらない、快適な生活なんていらない……信寧、私はまだあなたを愛しているわ。聞こえる?私はまだあなたの翼で空へつれていってほしいと思っているの。わかる?愛していると言って。早く……。」

written by 草戒指
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003103115192774

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