このとき、一台の車がやって来て、ゆっくりと私たちのそばに停車した。信寧は私をチラッと見ると、力いっぱい抱きしめた。そしてドアを開けて乗り込んで、バタンとドアが閉まった。

  私と信寧のこの3年間の愛はこの車のドア一枚で隔てられているだけだった。ドアの外では愛がよみがえり、ドアの中では愛が消えていく。

  車が走り出した。すべてはもう間に合わない。その瞬間、私の青春がさっと色あせていくのを感じた。呼吸なんて余分なもの。命なんてもう永らえなくてもいい。

  かなり長い間経ってから、私は家に向かった。どれくらい歩いたかわからない。家に着いて初めて、手に持っていた傘がなくなってしまっているのに気づいた。

  私は窓際に立ち、雨の帳に向かってポツリと言った。「信寧、あなたは私がどれだけあなたを愛していたか永遠に知ることはないわ。」

  私はもう信寧を訪ねていったりはしなかった。なぜなら私と信寧の性格はどんなに努力しても変わることはないとわかっていたから。たとえ私たちがいっしょにいても、家族になることはなく、ともに白髪の生えるまで、などということはありえなかった。;その上、“彼女”がほんとうに省都に行ったのを聞いていたから。

  すべては予想できたことだった。私の心は流れるのをやめた水のようだった。

  しかし、私は今までどおり天国で私たちは再会することになると信じていた。そうよ信寧、ことここにいたっても私はまだあなたを愛している。私はひとりぼっちで追憶の中にとどまり、またあなたと雨に濡れるのを望んでいる。世界が私たちのためにもう1度呼吸を止めるときを……

written by 草戒指

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