阿霧は私の机のそばに来て、机の上の緑のツタを見た。「なんてみずみずしい緑色なんでしょう。」

  「あの日フェンスの外でね、子供が摘んでるのを見たの。そして、落っことしていったんで、ついでに拾って帰って、瓶に差しておいたのよ。だけどこんなに長持ちするなんてねぇ。」

  「私たちって、私たちの愛ってこんな植物みたいに、昔の傷も消しさってしまって、生き直すことができるのかしら。」阿霧の涙がひとすじ流れた。

  「阿霧、愛し合った人がすべて最後にいっしょになれるとは限らないの。」私はそう言わざるをえなかった。「まして、あなたは過去には戻ることはできないのよ。」

  「阿雁、あなたはもう私を慰めてはくれないの?」阿霧の涙はどっと溢れ出し、私を憎しげに睨んだ。

  慰めることぐらいは当然できたのだが、私は心の中で『でも、だれが私をこんな目に遭わせたのよ。私を慰めてくれる人はいるの?』とつぶやいていた。

  私は窓の外を見た。雨はもうやんで、一面秋らしい気配が漂っていた。南国の秋は風は涼しく雲は淡い。しかし失恋した人間にとっては、日差しがどんなにさわやかでも気が滅入る。

  夜、阿霧は部屋で本を読んでいた。

  このときドアのベルが鳴った。私の心臓は一瞬縮み上がった。

  阿霧がドアを開けに行った。しばらくすると彼女が戻ってきて、1通の手紙を渡してくれた。「趙明よ。この前バーで知り合ったの。昨日の晩私が会ったのは彼の友達で、信寧って言うんだけど、その彼があなたに手紙を渡してほしいってさ。」

  私の心臓はドキドキし始めた。久しぶりの感覚だった。

written by 草戒指
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