モニターの中で彼が微笑みかけてくるのが好きだった。真新しい話題を話してくれるのが好きだった。晴れの日も雨の日も、街の中だろうが室内だろうが、彼のメール、彼の電話が、私をこの上なく快楽に浸らせた。私の心を優しく甘く変えていった。彼の「彼女」という一言が、彼の「僕のこと考えてくれてた?」という一言が、私の心の中を波打たせた。私の幻想は理性の抑制を打ち破り、自由に羽ばたいていった。私はどうしても現実の彼の顔を見たくなった。彼の暖かい肌に触れてみたくなった。彼の胸に抱かれてみたくなった。彼だけにしかない息の匂いを感じたくなった。こんな幻想が私の心の中の潮の流れを激しくしたし、恥ずかしくていてもたってもいられなくした。夫のネット不倫とのバランスが取れるようなレベルにまで達したとき、天青はだんだんと私の視野から遠ざかって行った。私は彼にいつも言っていた。「片思いはイヤ。私が愛しているほど愛してほしい。」と。彼がゆっくり離れていったとき、私はまだ不安なまま気持ちを引きずっていて、優しく芳しい喜びを残す場所を離れられずにいた。愛、それは最も定義が難しいもの。それはやって来ては消え、幻のようで測り知ることができない。先に気持ちを動かしたほうが負け。深く愛したほうが深く傷つく。だから、私は悲しい敗者となる運命なのだ。

  私はずっと彼が送ってくれたプレゼントをすべて注意深く大切に取っておいた。彼の直筆の一字一字も。そのプレゼントを見ると暖かい愛情が伝わってきた。私の頭の中では彼の一言一言がバラバラに吹き飛ばされ、彼の美しく明るい顔には違う表情が浮かぶ。でも、私は最後には悟ることになる。それらのものは愛情と同じ存在なのだと。愛が消え、愛を手に入れた喜びや失った時の痛みが跡形もなく流れ去るとき、それらのものは私にとって何の意味があるのか?

written by 紙片児
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