≪虫が飛ぶ【3−3】≫
2004年1月10日 小柔が行ってしまったときには荷物をまとめる時間もなかった。彼女の服はまだタンスに残されていた。彼女が描いた月の絵もまだ壁に貼ったままだった。そして泥人形4つもきちんと彼女の枕元に並べられていた。
「小柔にはほんとうのお母さんのほうがいいのよ。彼女の今の家は遠く南の地方でね。裕福なの。荷物をここに残したままでもかまわないのよ。」お母さんはそう言いながら、泣いた。顔を手で覆いながら。彼女の涙は指の間から流れ出した。1滴また1滴と。
しばらくすると、小柔の手紙が届いた。手紙には『うちが恋しいです。お父さんお母さんが恋しいです。お兄ちゃんが恋しいです。』と書いてあった。新しい家もいいところだし、あのおばさんもやさしくしてくれている、ということだった。彼女はもうすぐ手術を受けることになっていた。もともと彼女は生まれつきの聾唖者ではなかった。手術後、舌の筋肉を1本切り落として、彼女は話せるようになった。彼女は『お兄ちゃん、もう2ヶ月たったら休みになって家に帰れるよ。帰ったらまたあの虫が飛ぶ歌をうたってね……』と書いていた。
小柔の手紙の背景には月が描かれていた。私は小柔の顔を思い出していた。まん丸でキラキラ輝いていた顔を。
手紙を読んでいる途中で急に鼻血が出てきた。涙と混ざって紙の上に落ち、にじんで赤い花になった。
written by 羊子??
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003120915571091
「小柔にはほんとうのお母さんのほうがいいのよ。彼女の今の家は遠く南の地方でね。裕福なの。荷物をここに残したままでもかまわないのよ。」お母さんはそう言いながら、泣いた。顔を手で覆いながら。彼女の涙は指の間から流れ出した。1滴また1滴と。
しばらくすると、小柔の手紙が届いた。手紙には『うちが恋しいです。お父さんお母さんが恋しいです。お兄ちゃんが恋しいです。』と書いてあった。新しい家もいいところだし、あのおばさんもやさしくしてくれている、ということだった。彼女はもうすぐ手術を受けることになっていた。もともと彼女は生まれつきの聾唖者ではなかった。手術後、舌の筋肉を1本切り落として、彼女は話せるようになった。彼女は『お兄ちゃん、もう2ヶ月たったら休みになって家に帰れるよ。帰ったらまたあの虫が飛ぶ歌をうたってね……』と書いていた。
小柔の手紙の背景には月が描かれていた。私は小柔の顔を思い出していた。まん丸でキラキラ輝いていた顔を。
手紙を読んでいる途中で急に鼻血が出てきた。涙と混ざって紙の上に落ち、にじんで赤い花になった。
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