≪思い出【2】≫

2004年1月13日
  簡素な服を着た2人の女子の見張り兵が垣根の外で見張りしている。また別の何人かが小さなからだを隠そうと、頭隠して尻隠さずといった格好で厚みもない瓜のつるの中にもぐっていた。頭隠して尻隠さずと言うのは、瓜のつるは地面に自由にはびこらせてあるので、横には伸びているのだが、厚みはすねぐらいまでしかなく、からだを覆い隠すには十分ではなかったのだ。ことのついでに、地面を手探りすると、大きいのやら小さいのやら瓜がころがっているので、適当に摘んだりする。多くの畑ではいろいろな瓜がいっしょくたになって生え放題に植えてある。私たちは盗むのは盗むのだが、当然品種はわからない。いちばん多く盗んだのがキュウリだったのを覚えている。おそらくキュウリが育てやすかったからだろう。

  よさそうな隠れ場所を捜し出すと、山分けが始まった。あなたは一口、私が一口、多くの瓜はまだ熟れていなかったので、飲み込むと苦い味がした。でも、たいていは自分ちのよりは熟していておいしかった。世の中の美味というのは、残らず食べてこそ味がわかると言うものなのだろう。

  盗みとは言え、自分たちが手にいれたものなので、盗みのスリルや、盗んだものの味は格別だ、とそのころは感じていた。

  夜になると、こっそり家に忍び込んで、泥だらけの服を脱ぎ、夢の中で口をモグモグさせていた。

  次の日になると、盗まれた家の人が村外れで大声で捜索する声が必ず聞こえた。何食わぬ顔で歌を歌いながら一目散に走り抜けて行ったものだった。

written by 紫紫草
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003120912032414

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