≪思い出【4】≫

2004年1月15日
  恐る恐る手探り状態で池の中ほどまでやって来た。目いっぱい小さな頭を上向きにして、目標を捜した。岸の上で見たときには大きく見えたレンコンだったが、水の中で見てみるとただの茎で、すべて葉に隠されていた。それをかき分けながら探っていると、1本見つかったが、そう簡単なことではなかった。

  おそらく水の音が大きすぎたのだろう。池の見張りに気づかれてしまった。おっとりとした声が聞こえた。「誰だ?水の中にいるのは。」つまるところは盗みなので、心の中は虚しく、水の中で立ち尽くし、動き回ることはできなかった。見張りの人は注意深く水の中を見ようとしたが、たくさんのハスの葉が視線を邪魔した。当然何も見えず、岸辺の瓦のクズか何かを水の中に向けてやたらに投げてみるだけだった。

  私は池の中ほどで固まって、息もひそめていた。ましてやしゃべることなどできなかった。池はさほど深くはなかったが、池の底のドロはたくさんあった。1箇所にずっと立っていると、だんだんと沈んでいってしまう。初めは胸のところまでだった水も、だんだん沈んですでに首のところまできている。私はためしに爪先立ってみようとした。手にはやっとのことで足先で探り当てた花托がしっかりと握られていた。長い時間がたった。水の中には物音もなく、パシャパシャという水音もなくなった。肘から先ぐらいの体長の魚が私のそばを泳ぎ回っていた。捕まえてやろうと思ったが、また岸の人に気づかれでもしてはまずい。したいようにさせておくしかなかった。

written by 紫紫草
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003120912032414


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