私たちはたくさん取ろうとはしなかった。ブドウ園をあんまり荒らすと、来年また盗みには入れなくなる。遠慮して盗んでおけば、持ち主は痛くも痒くもない。そうでなければ、家まで怒鳴り込んで来られて、問い詰められ、お父さんに怒鳴られることになるのだ。

  こっそり足早にブドウ園を出ると、私たちは盗みがこんなに順調に運んだこと喜んで小声で歓声をあげた。堤防の上を見上げると、見張りの女の子がビクビクしながら2人の大きな男の子と何か話している。男の子が私たちを見つけると、大声で叫んだ。「どろぼうだ。」夕涼み台の上の中年男の目を覚まさせてしまった。取るものも取りあえず、クモの子を散らすように各自逃げ去った。私はスカートをつかんだままドタバタと道路に向かって走ったが、中年男はなんと自転車で追いかけてきた。機転を利かせ、ぱっと方向転換し、田んぼの中を走っていった。

  続々と集合場所にみんなが帰ってきた。スカートの中にはブドウは少ししか残っていなかった。一人一房分けるには足らなかったので、論功行賞を行った。いったいどうやって分けたのかはよく覚えていないが、見張りの女の子には最後にブドウの枝だけが与えられたことだけ覚えている。

  私といっしょに野菜どろぼうして子供時代を過ごした仲間たちが、あのころのことを懐かしく思い出しているかどうかはわからないが、楽しくてハチャメチャな時代だった。生活のストレスの中でも、あの笑顔を忘れないでいるだろうか。

紫紫草

written by 紫紫草

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