この夜地主の娘小青はずっと寝返りを打つばかりで眠ることができなかった。夢うつつの中、白い長い袍を着た見知らぬ男が彼女のそばを通り過ぎるのを見たような気がした。彼女を見る視線は異様なものだった。

  明け方のやわらかで暖かい日差しが庭に差しこんでくると、彼女は疲れきったからだを刺繍のある赤い錦の藤椅子に横たわらせ、日差しがかすかに閉められた窓から差し込んでくるのを感じていた。

  外のさわやかな鳥の鳴き声が彼女の耳に響いた。侍従の二環が軽やかな足取りでそばにやって来て見ると、小青の疲れ果てた目は充血していた。二環はささっとカーテンを巻いた。早朝の心地よい風が庭から吹き込んだ。ケイトウの花が揺れながら舞い落ちる。あざやかな赤い葉っぱが朝の空気の中で揺らめく。傷心の舞を舞うかのように。彼女はかすかに庭にあふれる香りを感じた。

  地主の娘小青と侍従の二環は早朝から外出した。小さな籠がゆらゆらと村のボロボロの石橋を渡って行く。彼女たちは南安墟の竹清庵におみくじを引きに来たのだ。竹清庵は今では古めかしく、門前の道の塀には青苔がむし、名も知れぬ小さな花が内側から顔を出し、ほのかな香りを発していた。

written by 林.向
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