≪血のように赤く【5】≫
2004年1月23日 地主の娘小青は遥か遠くからその見知らぬ男を見ていた。彼の笑みを含んだ美しい顔と異様な目つきを見ていた。「あなたが来ることはわかっていた。」見知らぬ男は言った。そして二人は竹林の中をそぞろ歩き、厚く降り積もった枯葉を踏みしめ、カサカサという音をたてていた。かすかな風が吹き竹林が揺れ始めた。彼女の鼓動はまだ収まらなかった。ずっとうつむいたままだった。「私はあなたに会ったことがある。」見知らぬ男は言った。「私は夢の中であなたに会ったことがある。あなたは何度も夢に出てきた。」小青はちょっと驚いた。彼女は勇気をふりしぼってこの見知らぬ男を見た。長い間。彼女の顔はきっと赤くなっていたに違いなかった。彼は淡々と物悲しい口調で言った。「私はいろいろな所へ行った。あなたの姿を捜していた。たくさんの人たちがもう捜すなと言った。世の中にあなたのような人がいるのか、とか、夢の中のことは現実の中では泡のようなものだ、とか。この泡もすぐにきれいに割れてしまう、と言った。最後に残った一縷の残り香のために、流れ者のようにそこらじゅうをさすらった。ひとりひとりの顔を見つめていた。私はあなたを見つけ出せると信じていた……。」キラキラ光る涙が地主の娘小青の美しい顔をつたった。彼女はこの世の中にこんなに優しい知己ができるとは思っていなかった。彼女はたくさんの夢を思い起こした。いつもひとりぼっちでぼんやりと歩いていた。行くべき方向を見つけ出せずにいた。まわりには息が詰まるような空気が充満していた。彼女はよく夜中に目を覚ました。見知らぬ男の両手が彼女の温かくしっとりした顔をなでた。彼女は思わず震えた。水がサラサラとそばを流れているのを見たような気がした。ケイトウの花が満開になっているのを見たような気がした。甘い雰囲気が心の中を満たした。そして彼女は見知らぬ男の肩に寄り添って静かに眠った。彼女の顔には咲いたばかりの花のように美しい笑顔が浮かんでいた。二人はそのままこの暗く静かな竹林で涼風がそよ吹く夜を過ごした。
written by 林.向
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003122118531204
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