白い長袍を着たよそ者の男李銘は北湾を離れたわけではなかった。夕方ごろ彼は南安墟で辺鄙なところにある旅館を捜し出した。日没ごろには南安墟はひどくひっそりとなり、行き交う人も少なくなった。そよ風がたくさんの枯葉を巻き上げ、旅館にはランプのかすかな明かりがゆらゆらとともった。旅館の仲居は注意しながら彼を階上に案内した。木でできた階段がガタガタと鳴った。彼は仲居の目つきが彼のことを怪しんでいるのに気づいた。

  「お客人、どちらからおいでで?」仲居は小声で尋ねた。

  「県からだ。」李銘は答えた。

  「県では騒乱が起こっているそうですね。」仲居がこわごわ尋ねた。

  「そうだ。今はそこらじゅうで乱が起こっている。」

  夜もあまり静かではなかった。うっとうしい雷鳴が鳴り響き、大雨が降ろうとしていた。強風が竹枠の窓を開け放ち、引き続いて豆粒大の雨が吹き込んできた。李銘は薄暗い黄色のランプの明かりの下、何か思索していた。そして強風がランプの明かりを吹き消すと、部屋の中は真っ暗になった。李銘は煙草に火をつけ、屋根の雨だれが窓枠にはねかかるはっきりとした音を聞いていた。

written by 林.向
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