≪血のように赤く【10】≫
2004年1月28日 外では騒ぎが起こっていた。そのとき地主の娘小青は一心不乱に少し古びた≪西廂記≫を読んでいた。病後の小青はかなりやつれて、か弱いからだが赤い錦の刺繍椅子に横たわっていた。
小青が外に飛び出てみると、家来たちがひとりの人を押してわめきながら通りすぎて行った。
どうしてこんなところで騒いでいるんだろう?小青はまったく不機嫌な様子で言った。
「お嬢さん」ひとりの満面笑みをたたえた家来が言った。「私たちはスパイを捕らえましたす。午前中ずっと府の周囲をうろうろ見まわっていたのです。」
「私は人を訪ねてきたのだ。」その人は言った。
地主の娘小青はしげしげと見るともう少しで驚いて叫び声をあげるところだった。その男は李銘だったのだ。小青は夢心地でぼうっとしていて、自分の目が信じられない気持ちだった。
「お前たち、早く彼を放しなさい。」地主の娘小青は声も出せないほど元気なく言った。
その後、彼らはまた北湾の土手へ出動して行った。水面は濛々とした蒸気に覆われていた。遠くのほうで見え隠れしていた船が水面を進んできた。進み方はゆっくりで、まるで凍りついたようだった。気にもかけていなかったのだが、そのうち影も形もなくなってしまった。
written by 林.向
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003122118531204
小青が外に飛び出てみると、家来たちがひとりの人を押してわめきながら通りすぎて行った。
どうしてこんなところで騒いでいるんだろう?小青はまったく不機嫌な様子で言った。
「お嬢さん」ひとりの満面笑みをたたえた家来が言った。「私たちはスパイを捕らえましたす。午前中ずっと府の周囲をうろうろ見まわっていたのです。」
「私は人を訪ねてきたのだ。」その人は言った。
地主の娘小青はしげしげと見るともう少しで驚いて叫び声をあげるところだった。その男は李銘だったのだ。小青は夢心地でぼうっとしていて、自分の目が信じられない気持ちだった。
「お前たち、早く彼を放しなさい。」地主の娘小青は声も出せないほど元気なく言った。
その後、彼らはまた北湾の土手へ出動して行った。水面は濛々とした蒸気に覆われていた。遠くのほうで見え隠れしていた船が水面を進んできた。進み方はゆっくりで、まるで凍りついたようだった。気にもかけていなかったのだが、そのうち影も形もなくなってしまった。
written by 林.向
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003122118531204
コメント