にぎやかさ、堕落、傷つけ合い、すべてが魅力的だ。少なくともひとりの人間の欲望を満たしてくれる。そう私は永遠に貪欲なのだ。

  遥か離れているからこそ、そこがいちばんよく思える。山上の空洞には急に嫌気がさしてきた。私はだんだんと水沙が疎ましく思われてきた。彼女が優しく私の肩の持たれかかってくると、私は無表情に遠くの町を見つめ、来る日も来る日も沈黙を続けた。水沙は毎日渓流のほとりで涙を流すようになった。彼女の涙は清く澄んだ泉の中に入り、毎日麓まで流れて行った。私たちは全力で美しい毎日を過ごしてきたが、残されたものは別れだけだった。これが千年間変わらないというゲームのルールだ。

  千年経った。私が彼女をはじめて傷つけた人間だったのだろうか?もしかするとそれ以前はだれも彼女を傷つけたことなどなかったのかもしれない。

  しかし私は後ろめたさなど感じない。人とはこういうものだ。私たちは生まれつき自分の欲望には逆らえないようにできている。たとえ手段も選ばず、すべてを犠牲にすることになっても。私は水沙と別れようと思った。たとえ彼女が私のことを愛していようとも。私が彼女のことをまだ愛しているとしても。初めは死ぬことさえ恐くなかった。今も躊躇はしていない。幸福は手に入ってしまえばもう幸福ではないのだ。私は欲望に引きつけられた。そして自分の本性を知った。誰を愛することになろうとも、自分のことをいちばん愛しているのだ。永遠に。

  だが、別れる理由が見つからなかった。彼女は文句のつけようのない女だった。美しくて、優しかった。私には彼女が足手まといだということはわかっていたけれど。昔はだれかが私の足手まといになるなんて我慢できなかった。どんな足手まといもひどく私を凶悪にさせた。残忍に手段を選ばず振り払ったことさえあった。

written by 羽虎
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