銀白色の海はうねっていた。水沙は死んだように静かになった。以前の骨身にしみるような優しさも、その瞬間、私の中から跡形もなく消え去っていた。私は昔の自分に戻ったようだった。自信満々でうぬぼれ、思いやりがなく、何にも束縛されない。

  私のそばの娘は、憂いを含んだ氷のように青い瞳で、突然ボソボソと笑い始めた。表情は美しく海底の火のようだった。私はとうとう思い出した。過去のすべてを。涙が彼女の美しい顔を伝ってやむことがない。しかし、今度つらい目に遭うのは私だった。千年経った。私は自分をコントロールできなくなった。

  千年経った。私はここであなたがどこかに輪廻転生するのを待っています。どこに生まれ変わっても心からあなたを愛します。でもあなたはいつも私から離れて行きます。来世もそしてその次の来世も。いつも私はあなたを引きとめられない。自分自身をも押さえられない。もしかしたら愛情はほんとうに単純なゲームで、上達するのはまだまだ難しいのかもしれない。

  千年経った。私の追い求めてきたのはただの物語だった。私はずっと蛾だった。私の愛は宿命のさなぎ、ずっと蝶にはなれなかった。彼女の笑顔は痛ましいほど美しかった。目の前の娘には以前の無邪気さと妖艶さはなかった。ただ千年の年を過ごして老いさらばえ、悲しみに満ちていた。これこそが私の千年の罪なのだ。

  水沙……私はただ黙っていた。千年間変わらない銀白色の海が狂ったように波立っていた。遥か遠くの都市の明かりは今まで通り明々と輝いていた。すまない。私はまぶたを閉じて笑った。すまない。

written by 羽虎
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