≪悟空【3】≫

2004年3月3日 連載
  それは私が十歳ちょっとのころのことでございます。私は小さいころ中国の辺境の小さな村に住んでおりました。中国の管轄の村でございます。当時は隋煬帝楊広の在位のころでした。みな隋煬帝の統治は残虐だと言っておりましたが、私の故郷は中国から遠く離れておりましたので、子供時代は比較的温和で平和なものでございました。私が住んでおりました村の近くには毎年きれいな桃の花が咲いたのでございます。私と同い年の仲間たちといっしょにいつも村外れの倆界山に桃の花を見に行っておりました。その年の春、私と友達数人はまたいっしょに倆界山に走って花見に出かけました。いっしょに行った中には女の子もおりました。彼女の名前も桃花でした。彼女はきれいな子で、桃の花のように美しく艶やかでございました。子供の私はいつのまにか彼女のことを好きになっていたのでした。その日、花見に行って、チャンスがあったら彼女に告白しようと思っておりました。その日、私たちは楽しく遊んで、次第に時間が経つのも忘れてしまい、気がつくと夜になっておりました。夕暮れの倆界山はかなり不気味です。昼間見たときはあんなに心和んだ桃の花も怪しく変わり始め、腕を広げた妖怪に見えてきました。私には女の子の桃花が恐がっているのがわかりましたので、いっしょに山を下り家に帰ろうと言いました。みんなも同じように次々と山を下り始めました。しかし豆子という男の子だけは動こうとしませんでした。私たちは彼に早く帰るように促しましたが、豆子は急に桃花の抱きついて、私が怒りに震えるような言葉を発したのでございます。彼はこう言いました。「桃花、オレはお前が好きだ。結婚しよう。」がんじがらめにされたか弱い桃花がいっぱい涙を流しながら私を見ていました。私の心は張り裂けるようでした。私は豆子を引き離し、強烈な一発を食らわして、おとなしくしろ、と言いました。桃花はたよりなく私のそばにやって来ました。私の身体にはたちまち力と元気があふれてきました。絶対だれにも桃花をいじめさせないぞ、と私は思いました。このときです。豆子は地面から立ち上がり、いつのまにか手には鋭いナタを持っていたのでした。

written by 白玉堂
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2004011823351608

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