≪悟空【6】≫

2004年3月6日 連載
  ひとりの西域の剣客が年老いた乞食の話を遮った。「じいさん、その豆子ってヤツはどこへ行ったんだ?豆子ってヤツはまるで犬畜生じゃないか。もし見つけたら、死ぬほど痛めつけてやる。」年老いた乞食はひどく痛ましい笑いを浮かべ、「今日に至るまでずっと豆子には会ったことはありません。」と言った。

  私が狂ったような叫びを発していたとき、そう遠くないところで人の笑い声がしました。怪しい笑い声でした。ゲラゲラという声は聞くに耐えません。怒りに震えた私は、大声で問いただしました。「誰だ、笑っているのは?」それはまるで嘲笑っているかのようでした。怪しい笑い声は林の深いところから聞こえてまいります。「オレ様はここだ。来てみろ。」見ると地面に折れた太い木の枝が転がっておりましたので、それを拾ってその声のほうへまっすぐに向かって行きました。森の深いところまで行ってみると、やっと見つけました。うっそうとした森の奥には山があったのです。私は唖然としてしまいました。この倆界山のその中にまた山があるなんていうのは聞いたことがなかったのですから。さらに驚いたことに、麓の岩石の隙間から頭が飛び出ていたのでございます。この頭は毛むくじゃらで、ボサボサ、どんな顔をしているのかさえさっぱりわからないのでございます。私は恐る恐る近づいて行って、木の棒でその頭を叩いてみました。するとその頭はブルッと身震いをすると顔を挙げました。それは毛むくじゃらのサルの顔だったのです。そいつは私に向かって牙をむきました。びっくりいたしました私は地面に坐りこんでしまいました。こいつはまるで怪物です。妖怪です。私が逃げ出そうと思っていたちょうどそのとき、そのサルは叫びました。「逃げようってのか?あの娘の仇は討てないぞ。オレ様はお前を傷つけたりはせん。」私は立ち止まり、振り向いて疑惑の目でそのサルを見たのでございます。

written by 白玉堂
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2004011823351608

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