≪悟空【8】≫

2004年3月8日 連載
  私はずっと長い間気を失ったままでしたのに、私が桃花を殺したのでしょうか?それは私がそれまでに聞いたこともないほどでたらめな笑い話でした。私は冷静さを取り戻し、そのサルの頭を見ましたが、見れば見るほど腹が立ってきました。私は手に持った棒を握りなおし、手ひどくその頭を叩きのめしましたが、「パン」という音とともに棒は折れてしまいました。悟空は笑いながら言いました。「痒いところが治ったわい。」そして彼は続けました。「でもお前を責めるわけじゃないが、お前が信じないことはわかっておったわ。もしお前に度胸があるなら、オレ様のそばに来て坐ってみろ。真相を教えてやる。」私は言いました。「誰がお前のうさんくさい話なんか信じるもんか。」悟空は大笑いします。「どうやら度胸はないようだな。」私はそのころ若くて血気盛んでしたし、どうやったって悟空がその山から飛び出してくることはないだろうと、安心しておりました。そして彼のそばに行って、坐って言ったのです。「いったい何のお遊びが始まるんだ?」

  孫悟空は言いました。「坊主、目を閉じろ。」私は目を閉じました。身体がリラックスして、まるで暖かい液体が流れていくような気分になり、夢の中に入っていきました。私は空に浮かんでおります。雲の間から見えるのは、私自身ではないですか!そして豆子や桃花もいます。豆子はナタを振りかざして、その‘私’に切りつけてまいります。私は空の上で唖然としてしまいました。見るとその‘私’が狂ったようにナタを奪い取り、反対に豆子に切りつけて行きます。空の上の私の耳には風の音しか聞こえません。でも、豆子の叫び声と桃花が恐怖のため凄惨な叫び声をあげるのが聞こえたような気がしました。一太刀浴びた豆子が崖を転がり落ちるのが見えます。不審に思いながら見ておりますと、その狂った‘私’は桃花を地面に押し倒しております。その続きは私が固く目を閉じていたので見ておりません。私は全く信じられませんでした。それが私がやったことだとは。私は空の上で大声で叫び、パッと目を見開きました。暖かい日差しが私の顔に差し込んでおりました。私は夢から覚めました。悟空は笑いながら私に聞きます。「どうだ?」私は悲しみと憤りの極みでした。「これはお前の妖術か?お前は魔法を使うのか?」悟空は笑うのを止めてまじめに私に言いました。「お前が今見たのは、間違いなく昨日の晩起こったことだ。オレ様はお前に事の経緯を話してやってもいいが、このことはお前や豆子のせいではない。お前がほんとうの悪人なら、今まで生かしておいたりはせん。」私は全人格が崩壊してしまい、ぼうっとなりながら尋ねました。「それはいったいどうしてだ?」孫悟空は言います。「天地の始まりに、お釈迦様が万象世界を創り出された。この世はすべてお釈迦様の頭の中にある。この世はすべて夢幻なのだ。すべてはお釈迦様の一念の中にある。」私は大声で言いました。「お前のたわ言などどうでもよい。私は昨日の晩いったい何があったのかを知りたいだけなんだ。」孫悟空は辛抱強く言いました。「最後まで聞け。いいか。」私は言いました。「そんな話、でたらめじゃないか。この世界が夢幻だって?それならお前も偽者で私も偽者だ。もともと存在しないのだ。それならどうして私たちはここで話しているんだ?」

written by 白玉堂
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2004011823351608

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