≪悟空【9】≫

2004年3月9日 連載
  孫悟空は言いました。「仏家は言った。色即是空、真もまた偽なり。お前とオレ様はこのすべての中に含まれているんだ。すべてはお釈迦様の一念なのだ。天地開闢のときお釈迦様はオレ様を創り出された。オレ様はお釈迦様の念想なのだ。」

  お釈迦様は広大で際限もなく広がっている天でもなく地でもないところに静かに座していらっしゃる。お釈迦様が目を開き周りを見渡すと、茫々たる青い海だ。ただお釈迦様の影だけがある。お釈迦様はおっしゃる。「影よ、お前は私なのか?」と。影は答える。「お釈迦様、あなたは私なのですか?」お釈迦様はにっこり笑い後光がぱっと周りを照らす。「影よ、私はお前だ。」影は言う。「お釈迦様、私はあなたです。」お釈迦様はおっしゃる。「影よ、お前はもともと存在しないが、私は存在する。それならどうしてお前が私になれるのだ。」影は言う。「お釈迦様、あなたは存在しないが、私は存在するのです。どうしてそのことをご存知ないのですか?」お釈迦様はまた笑われる。「そうお前も私も存在しないのだ。お前も私も空なのだ。」影は言う。「お名前をいただきありがとうございます。」お釈迦様はおっしゃる。「え?お前の名前?」影は言う。「お名前をいただきありがとうございます。私の名前は‘悟空’です。あなたは私に空の意味を悟らせてくださいました。私は空です。お釈迦様も空です。この世界も空です。」お釈迦様は思いに沈まれる。「それではすべてのものが存在しない。お前も私もどうしてその中に生まれてきたのだ?」影は言う。「お釈迦様、あなたは私がどこから来たのかわかりますか?」お釈迦様はおっしゃる。「お前は私の影だ。お前は私の念想だ。私がいるから当然の結果としてお前がいるのだ。」影は言う。「私がどうしてここにいるのかは、あなたがここにいる理由と同じなのです。」お釈迦様は笑っておっしゃる。「それでは私は誰の影なのだ?誰の念想なのだ?」影も笑って言う。「わかりません。知りたいです。私はお釈迦様であり、お釈迦様は私である、ということですね。」お釈迦様は初めて心の底から大いにお笑いになる。「影よ、あぁ、悟空よ、私はもうひとつ世界を創ろうと思う。もうひとり釈迦を創ろうと思う。もうひとつ影を創ろうと思う。どうだ?もうひとりの釈迦がどのようにして悟りを得るか見てみよう。」影は賛成する。「お釈迦様、よいお考えです。」

written by 白玉堂
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