年老いた乞食は言った。「私がこの三弦を弾くときはいつも、ほんとうの神様が穴から出てくる感じがするのです。まるで私が空を飛んでいるような感じがするのです。みな様、もしご興味がおありなら、一曲弾いてさしあげましょうか。」
みなは拍手した。
年老いた乞食が三弦を弾き始めた。世の移り変わりの物悲しさを歌った音楽がたちまちみなの心に染み込んでいった。みなは呼吸を押し殺して、静かに聞いていた。1曲弾き終わると、みなは酔いしれていた。
ひとりの書生が年老いた乞食に言った。「私はあなたが弾いた曲を聴いて、あなたが話したことが真実だと信じられるようになった。」年老いた乞食は笑って言った。「みな様にお御贔屓にしていただきまして、私は今日最高の気分でございます。」このとき太鼓腹の太った男が立ち上がって言った。「みなさん、保証はできんがこの老人の話はほんとうだ。でも、その孫悟空というサルの話は聞いたことがある。そのサルは実在すると私は信じている。」ずっと隅っこに坐っていた若者がたしなめた。「弟弟子よ、でたらめを言うな。」みなは奇妙さと可笑しさを感じた。その書生気取りの若者はなんとこの富豪のような太った男を弟弟子と呼んだのだ。太った男は自分の腹をなでながら大笑いした。「兄貴が怒ったから、オレはもう言わん。」
若者はみなが驚き訝ってのぞきこんでいる中、年を取った老人を抱き起こして言った。
「師匠、我々はもう行かなければ。」太った男は笑いながら言った。「よっしゃ、出かけよう。」3人が旅館を出ると、外には書生の雑用係の子といった格好をした人が、雪のように白い馬を引いて来て、老人が馬に乗るのを助けた。4人はだんだんと遠くなっていった。
旅館ではみなが次々と笑った。みな妖怪だったのだ。
このとき年老いた乞食の叫び声が聞こえた。みなは彼を取り囲んだ。ふと見ると、あの若者の坐っていた椅子には1本の黄金色の毛が残っていた。
written by 白玉堂
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2004011823351608
みなは拍手した。
年老いた乞食が三弦を弾き始めた。世の移り変わりの物悲しさを歌った音楽がたちまちみなの心に染み込んでいった。みなは呼吸を押し殺して、静かに聞いていた。1曲弾き終わると、みなは酔いしれていた。
ひとりの書生が年老いた乞食に言った。「私はあなたが弾いた曲を聴いて、あなたが話したことが真実だと信じられるようになった。」年老いた乞食は笑って言った。「みな様にお御贔屓にしていただきまして、私は今日最高の気分でございます。」このとき太鼓腹の太った男が立ち上がって言った。「みなさん、保証はできんがこの老人の話はほんとうだ。でも、その孫悟空というサルの話は聞いたことがある。そのサルは実在すると私は信じている。」ずっと隅っこに坐っていた若者がたしなめた。「弟弟子よ、でたらめを言うな。」みなは奇妙さと可笑しさを感じた。その書生気取りの若者はなんとこの富豪のような太った男を弟弟子と呼んだのだ。太った男は自分の腹をなでながら大笑いした。「兄貴が怒ったから、オレはもう言わん。」
若者はみなが驚き訝ってのぞきこんでいる中、年を取った老人を抱き起こして言った。
「師匠、我々はもう行かなければ。」太った男は笑いながら言った。「よっしゃ、出かけよう。」3人が旅館を出ると、外には書生の雑用係の子といった格好をした人が、雪のように白い馬を引いて来て、老人が馬に乗るのを助けた。4人はだんだんと遠くなっていった。
旅館ではみなが次々と笑った。みな妖怪だったのだ。
このとき年老いた乞食の叫び声が聞こえた。みなは彼を取り囲んだ。ふと見ると、あの若者の坐っていた椅子には1本の黄金色の毛が残っていた。
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