ミートは部屋をしげしげと観察した。この部屋は奥の部屋だ。彼らは外の部屋にいる。壁際にはいくつか棚があって、試験管、鉄製の台、アルコールランプ、石綿網などが置かれている。ほかにも鉗子、トレーなどがある。研究室の設備とほぼ同じで、特に変わったところはない。ミートはテーブルから飛び降りると、奥の部屋に入っていった。奥の部屋は外の部屋とだいたい同じ広さで、こちらも台がいくつかあった。その上にはたくさんのビンやカンが置かれていて、中には奇妙な物が入れられていた。ミートは台の上に跳び乗り、詳しくそれらを見てみた。5,6個見てみたが、わからない。すべて黄色がかった“水”に奇妙な形の赤い肉のような色のものが浸かっていた。ミートは向きを変え、ローラのところに戻ってきて、自分が見たものを彼女に教えてやった。ローラが何か言おうとしたとき、突然ドアの鍵を開ける音がした。人が来たのだ!ミートは急いで身を隠した。彼が見たのはまたしてもあの見知らぬ女性だった。しかし、今度はその後ろにひとりの老人がついて来ていた。

  ふたりは小さな鉄の籠の前まで来た。見知らぬ女性が振り向いて老年の男に言った。「教授、見てください。これが私が持ってきた白いマウスです。」

 「うむ、」教授と呼ばれた老年の男は腰をかがめのぞきこみながら言った。「なかなかじゃ、明日は子供たちに解剖実験をさせよう。」

  解剖!!神様!彼らはローラを解剖しようとしているのか!!ミートは卒倒しそうになった。ローラはすでに腰を抜かしてしまっていた。

  「あ、教授、」見知らぬ女性がまた口を開いた。「もうひとつ興味深いことがありましたので、ご報告します。今日私が研究室でこの白いマウスを取っているときに、スキをついて1匹逃げ出してしまったんですよ。走るのが早くてあっという間にどこかに行ってしまいました。まるで前々から狙っていたみたいでした。どうも人間に育てられた白マウスらしくないですね。」
 
  「ん?そうか?」教授はちょっと驚いた様子だった。

  「そうです。あのときはびっくりしました。」

  教授は低い声でつぶやいて、微笑んでうなずきながら見知らぬ女性に言った。「ネズミというやつは賢い動物だ。ヤツらの行動は時々人間の想像を超えるときがある。もしかするとこいつら、籠の中の生活について言い分があるかもしれんな。ははは!君、こいつらをよく見ておきたまえ。」

  「だいじょうぶです、教授。実はこの籠はもう頑丈にしてありますので。でも、もうちょっと用心しておけば、何が起きても安心ですね。」見知らぬ女性がそう言いながら、引出しに手を伸ばして何か取り出し籠の鉄の扉の上に置いた。

  「こうやっておけば、だいじょうぶ。」見知らぬ女性は得意げに言った。

  教授は肩をすくめた。ふたりはいっしょに出て行った。

written by 一線雲児
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