「神様!これはいったいどうしたことなの?いったい何が起こったの?」見知らぬ女性はそう言いながら小さな鉄のクリップをはずしながら半分に切れた尻尾を拾いあげた。「これは白いマウスのものだわ!教授、見てください。」

  教授は尻尾を受け取って見てみた。そして頭を低くして籠と籠の中の白いマウスをジロジロ調べた。彼の目に映ったのは口元の毛に点々と血の跡をつけたローラだった。そして身を起こして考え込み、ブツブツ言った。「半分に切れた尻尾?マウスの数は減っていない!ううむ……おもしろい。」

  「何をおっしゃっているんですか?」見知らぬ女性には教授の声がはっきりと聞き取れなかった。

  「うむ、何でもない。私は先に教室へ行く。子供たちが来ているはずだ。君はここを片付けておいてくれたまえ。」言い終わると、教授は籠を提げて出て行った。

  ローラは静かに籠の中ではいつくばっていた。彼女はよけいなことは何も考えていなかった。ただミートと過ごした日々を思い出していただけだった。彼女は思った。「もし幸せな記憶を持ったまま死ねるなら、来世はきっとミートに会える。ミート……」

  ミート!!ローラは突然目を見開いた。ミートが部屋から出てきて、教授の跡をつけて来たのだ。バカ!どうして逃げないの?つけて来てどうしようっていうの?ローラは必死にミートに向かって首を振って、早く逃げさせようとした。しかしミートはまるで何も見えないかのように、跡をつけ続けた。ローラは降りしきる雨のように涙を流した。ミートはやはり彼女を見捨てなかったのだ。彼女にはとっくにわかっていた。

written by 一線雲児
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