車はゆっくりと出発し、だんだんとスピードを上げていった。私と小雨は車の中で右へ左へと揺られていた。小雨の額はもう少しで硬い座席の背もたれにぶつかりそうになった。私は大声で言った。「運転手さん、もう少しゆっくり運転してもらえませんか?」

  運転手は答えなかった。ただ身の毛もよだつような冷ややかな笑い声だけが聞こえた。

  薄暗いライトで照らし出され、音をたてて過ぎてゆく道端の並木が、突然いっせいに牙をむき爪をふるいだした。小雨はびっくりして私の胸に飛び込みからだじゅうを震わせた。私はしっかりと彼女の手を握り、「怖がらなくてもだいじょうぶだ。」と、なだめた。

  車のライトが突然消えた。小雨は震えながら私の名を叫んだ。「四毛、四毛!」

  「ボクはここにいるよ、小雨。ボクはここだよ。」

  その後、ライトが再び点灯したが、不思議なことに運転手は影も形もなく消え失せ、ハンドルだけが右へ左へと動いていた。スピードもだんだんと上がっていった。

written by 連鋒
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2004031315545107

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

日記内を検索