假鈔【3】

2004年6月21日 連載
  彼は偽札を代えてもらうこともできず、家にも帰れないでいた。どういうわけか江峰は、同僚の劉さんのことを思い出した。遊びに来たような振りをして、劉さんの家を訪れた。

  運のいいことに、劉さんの奥さんは不在だった。

  ふたりの男はあれやこれやとしばらく話していたが、江峰はお金のことに話を移していった。

  劉さんが言った。「お金っちゅうヤツは、多すぎてもかなわんし、少なすぎてもあかん。なけりゃほんまにどうしようもない!」

  江峰は言った。「あんたがお金の話をしたんで、思い出したが、奥さんがオレが出かけるときに100元を1枚くれて、革靴を買ってきてほしいと言ってたんだ。それが、どうしたものか、お札がひどく新しくて、道を急いでいたこともあって、なぜか失くしてしまったんだ。」

  劉さんは言った。「兄貴、ほんとうにオッチョコチョイやな。あんた今日革靴を買って来なかったんなら、きっと嫁はんにボコボコにされるわ。よっしゃ、ワシちょっと余裕があるから、都合つけといてやるわ。」

  江峰は劉さんの手から100元受け取ると、言った。「弟よ、明日の出勤のときに必ず返すからな。」

  劉さんは笑って言った。「はいな、兄貴、お金のことはもう言いなさんな。」

  江峰が帰ったとたん、劉さんの顔が緊張の色に包まれ始めた。昨日もらったばかりの給料を、奥さんは今日の午後差し出せと迫るに違いなかった。今なら彼女が帰って来る時間までにちょっとある。すぐに親友の李さんを訪ねて行かなければ、と思っていた。

written by 司馬村
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