假鈔【4】

2004年6月27日 連載
  出勤時、江峰はできるだけ劉さんに会わないようにしていた。実際出くわしたのだが、江峰はめちゃくちゃ忙しい振りをして、劉さんに向かって手を振るだけで、急いで通り過ぎて行った。

  数日後、局内には悲しい知らせが伝わった。局長の親父さんが亡くなったのだ。江峰は指折り数えてみた。局長の親父さんが亡くなったのは今回で4回目だった。1回目は実の親。2回目は奥さんのお父さん。3回目は継父。4回目は今の奥さんの父親だった。江峰は思った。この調子なら、局長の親父さんはいつまで経ってもいなくならんぞ。そんなことより、いずれにせよ局長の父上様が亡くなったのだから、局の上から下まで役人はみんな行かなくちゃならない。

  江峰は妻の手から100元札を受け取ると、家から自転車を出してきて、局長の家に向かった。

  突然、後方からだれかが呼び止めるので、自転車の速度を落とした。やって来たのは他でもない、劉さんだった。江峰は劉さんの焦る顔色を見て何の用かを悟り、妻にもらった100元札を劉さんに返すしかなかった。

  劉さんは最初は受け取らず、大声で「兄貴、水臭いな。ワシは借金の取立てに来たわけじゃないんやで。ワシはただ兄貴と話しようと思って。」と言っていた。劉さんはお金を渡されると、表情も幸せそうになり、江峰に言った。「行こう、ワシら局長の家に紙銭を焼きに行かなくっちゃ!」

  江峰にとっては行くも地獄、帰るも地獄。劉さんといっしょに局長の家に行くしかなかった。

  局長の家の前には、車もたくさん停まり、人もたくさん来ていた。花輪はいっぱいで、爆竹も鳴り止まなかった。局機関と2級部門から来た人はいつもより欠席も少なく、みんなは悲しそうな顔を作りながら、笑いをこらえているようでもあった。局長は背中に斜めに白い帯を掛け、ひっきりなしに参列者と握手をしていた。声もかなりかれていた。

written by 司馬村
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