かなり昔のこと、大運河沿いに阿牛という農民が住んでいた。阿牛の家は貧しく、7歳のときに父を亡くし、母の機織りに頼って暮らしていた。阿牛の母は夫に先立たれ、子供は幼く、生活の苦しさのために、いつも泣いてばかりいた。泣き過ぎて目を悪くしてしまった。

  阿牛は13歳になった。彼は母に言った。「おかあさん、あなたは目が悪い。これからはもう寝ずに機織りはしちゃいけないよ。僕は大人になったんだから、おかあさんを食べさせてあげるよ。」そして彼は、長者の張さんの家に行って作男をやったが、親子2人の生活は苦しかった。2年が経った。母親の目の病気はますますひどくなり、ほどなく失明してしまった。阿牛は、母の目は僕のために見えなくなってしまったんだ、なんとかして母の目を治してあげたい、と思った。彼は長者のところで働きながら、朝早くから晩遅くまで荒地を開墾して畑で野菜を作った。野菜を売ってお金にし、母を医者に見てもらって薬を買った。しかしどれだけ薬を飲んでも、やはり母の目はよくならなかった。ある日の夜、阿牛は夢を見た。夢の中に美しい娘が出て来て、彼の畑仕事を手伝った。そして言った。「運河に沿って西へ数十里行くと、天花蕩という湖があります。湖の中に白い1輪の菊が咲いています。それが眼病を治すのです。この菊は9月9日の重陽節になると花を咲かせます。その時になったらこの花を煎じてお母さんに飲ませてあげなさい。きっと目の病は治ります。」重陽節の日、阿牛は携帯用の食料を携え、天花蕩に白い菊の花を探しに行った。もともとここは野草の生い茂る荒地で、“天荒蕩”と呼ばれていたのだ。彼はそこで長い間探したが、黄色い菊ばかりで白い菊は見つからなかった。探し続けて午後になった。草だらけの湖の中に小さな土の盛り上がったところがあり、その近くの草むらで1本の白い野菊を見つけた。この白い菊の生え方は変わっていて、ひとつの株から9本枝分かれしているのだが、今はひとつの花しか咲いていない。あとの8つの花は開花を待つつぼみだった。阿牛はこの白い菊を根っこに土をつけたまま掘り返して持って帰り、家の庭に植えた。彼の水やりや手入れのおかげで、しばらくすると8つの花が次々と開いた。芳しく美しい花だった。そして彼は毎日花をひとつずつ摘んでは母に煎じて飲ませた。7つ目の花を飲み終わったあと、阿牛の母の目は見え始めた。

  白い菊が眼病に効くという噂はすぐに広まった。村人は次から次へとこの不思議な野菊の花を見に訪れた。この知らせは金持ちの張さんのところにも届いた。金持ちの張さんは阿牛を呼び出し、すぐにその白い菊を張家の花園に移植するように命じた。阿牛はもちろん言うことを聞かなかった。金持ちの張さんは数人の手下を阿牛の家に行かせその白菊の花を奪わせた。奪い合いの結果、菊の花は折れてしまったが、彼らは大手を振って帰っていった。阿牛は母の眼病を治してくれた白菊が強奪に遭って、とても悲しんだ。折れた白菊の前に座り込み、暗くなるまで泣き続け、深夜になってもそこを離れようとしなかった。夜中過ぎごろ、涙でかすんだ彼の目の前が、突然光った。この前夢に現れた娘が急に彼の目の前に現れたのだった。娘は彼に言った。「阿牛、あなたの孝行心はすでによい報いを生んでいます。悲しむ必要はありません。帰って寝なさい。」阿牛は言った。「この菊の花は私の家族を救ってくれた。その菊が折られてしまったんだ。私はもう生きていけないよ。」娘は言った。「この菊の花の茎は折られてしまったけれど、根はまだあります。根を掘り出してどこか別の場所へ移し変えれば、白い菊がまた咲くはずです。」阿牛は尋ねた。「娘さん、あなたはいったい誰なんですか?教えてください。お礼を言わなくちゃ。」娘は言った。「私は天の菊の精。あなたを助けるためにやってきたのです。お礼など必要ありません。あなたは“種菊謡”の歌のようにしさえすれば、白菊は必ずまた花を咲かせますよ。」菊の精は続けて歌を詠んだ。「3月に分け4月は先を切り、5月は水に濡らし、6月には料頭をやって、7月8月にかぶせれば、9月には刺繍した毬が転がり出る。」それが終わると、姿が見えなくなってしまった。阿牛は家の戻ると、菊の精の“種菊謡”をしっかり繰り返してみた。そしてやっとその意味がわかった。3月に白菊を移植して、4月に剪定し、5月はたっぷり水をやり、6月にまめに肥やしをやり、7月8月にはよい根を守ってやれば、9月には刺繍玉のような菊の花が咲く、というのだ。阿牛は菊の精が教えてくれたとおりにやってみた。すると菊の古い根からはたくさんの枝が生えてきた。今度はこの枝を切り落として挿し木して、また“種菊謡”の歌のとおりに栽培すると、次の年の9月初めの重陽節には香りに満ちた白菊の花が咲いた。その後、阿牛が菊の栽培技術を村の貧しい農民たちに教えると、この一帯では菊を植える人がだんだんと増えてきた。阿牛が9月9日にこの白菊の花を見つけたので、後に人々は9月9日を“菊花節”と呼ぶようになり、菊の花を観賞したり、菊花茶を飲んだり、菊花酒を飲んだりという風習が生まれた。

(口述;景海 整理;春雷)
http://www.zhshw.com/story/2003-11/2003112495209.htm

コメント

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2006年1月28日2:49

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