≪愛、、、その後【2−4】≫
2003年11月30日 大雨が注ぐように降っている。
彼はドアを開けて出ていってしまった。私は窓の前に立って、彼が雨の中を道端までヨロヨロと歩いて行って、タクシーをまっている、その様子を見ていた。雨の日のタクシーは忙しくて、彼は雨の中で5分待っても車を拾えなかった。
「信寧、信寧……」私の心は痛み出した。私は傘を探して下の階へ走って降りていった。これが私と信寧の最後のチャンスだと思った。今度は昔のけんかと違って私たちはすでにお互いをこれ以上ないほど傷つけていた。
信寧はもう全身びしょぬれだった。からだじゅう震えていた。彼を知ってかなりになるが、こんなに冷え切って、こんなに脆くなってしまった彼を見たことはなかった。私はしっかりとからだを彼のからだにすり寄せた。右手で傘をさしていた。彼の左手は私の右手の上になって、しっかりと握りしめられていた。私の長い髪は雨風に吹かれてもつれあい、傘をさしていると言っても形ばかりであった。全身だんだんと水浸しになっていった。私は目を閉じて心の中で祈った。「信寧、もしあなたが今“愛している”と言ってくれたら、私はあなたといっしょに行くわ。どこへ行こうとも、地位なんていらない、仕事なんていらない、快適な生活なんていらない……信寧、私はまだあなたを愛しているわ。聞こえる?私はまだあなたの翼で空へつれていってほしいと思っているの。わかる?愛していると言って。早く……。」
written by 草戒指
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003103115192774
彼はドアを開けて出ていってしまった。私は窓の前に立って、彼が雨の中を道端までヨロヨロと歩いて行って、タクシーをまっている、その様子を見ていた。雨の日のタクシーは忙しくて、彼は雨の中で5分待っても車を拾えなかった。
「信寧、信寧……」私の心は痛み出した。私は傘を探して下の階へ走って降りていった。これが私と信寧の最後のチャンスだと思った。今度は昔のけんかと違って私たちはすでにお互いをこれ以上ないほど傷つけていた。
信寧はもう全身びしょぬれだった。からだじゅう震えていた。彼を知ってかなりになるが、こんなに冷え切って、こんなに脆くなってしまった彼を見たことはなかった。私はしっかりとからだを彼のからだにすり寄せた。右手で傘をさしていた。彼の左手は私の右手の上になって、しっかりと握りしめられていた。私の長い髪は雨風に吹かれてもつれあい、傘をさしていると言っても形ばかりであった。全身だんだんと水浸しになっていった。私は目を閉じて心の中で祈った。「信寧、もしあなたが今“愛している”と言ってくれたら、私はあなたといっしょに行くわ。どこへ行こうとも、地位なんていらない、仕事なんていらない、快適な生活なんていらない……信寧、私はまだあなたを愛しているわ。聞こえる?私はまだあなたの翼で空へつれていってほしいと思っているの。わかる?愛していると言って。早く……。」
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≪愛、、、その後【2−3】≫
2003年11月29日 私は賛成しなかった。私には私たちが今いる海岸の町が美しくて愛すべきものであり、快適で暖かく感じられた。その上私がいちばん恐れていたのは、そんなにぎやかな都市に行ってしまったら、私は自分自信にもっと自信が持てなくなるだろうし、信寧に対する信頼も薄れていくのではないかということだった。私は彼に負ければすべてを失ってしまうだろうと思った。
「阿霧、僕たちが付き合ってきたこの何年間か、けんかしている時間が多すぎたとは思わないかい?」と、彼は切り出した。眉毛の間に疲れが見てとれた。「僕たちはお互いを疑ったり傷つけ会ったりするばっかりだった。僕は本当に疲れたよ。僕は僕たちの間にはもうどんな信頼も希望もないと思うよ。別れよう。そのほうがお互いのためだ。」
彼が別れを切り出したのはこれが初めてだった。私はめまいがした。
「わかっているよ。僕がよくなかったんだ。君は安定しているほうが好きだし、痒いところに手が届くくらいのほうがいいんだよ。快適に暮らしていくほうがいいんだ。わかる気持ちもするな。でも、僕はほんとうに君によくしてあげられなかった……僕のプレッシャーが大きすぎたんだ。社会からのプレッシャー、そして家庭からのプレッシャー……僕は今、君が望むような生活をさせてあげることができない。だから、もしかしたらこんな僕は君にはお似合いじゃないのかもしれない。」彼は暗い表情で言った。
「人に罪を着せようとすれば、その口実はいくらでもある、ってわけね。」私は怒って言った。「こんな口実、男がよく使う手だわ。あなた俗っぽくなっちゃったね。信寧。あなたが私たちの間にもう愛情がなくなったと思うなら、したいようにすればいいわ。」
信寧の顔は青白かった。私は全身が震えた。泣きたかったが涙が出なかった。
written by 草戒指
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「阿霧、僕たちが付き合ってきたこの何年間か、けんかしている時間が多すぎたとは思わないかい?」と、彼は切り出した。眉毛の間に疲れが見てとれた。「僕たちはお互いを疑ったり傷つけ会ったりするばっかりだった。僕は本当に疲れたよ。僕は僕たちの間にはもうどんな信頼も希望もないと思うよ。別れよう。そのほうがお互いのためだ。」
彼が別れを切り出したのはこれが初めてだった。私はめまいがした。
「わかっているよ。僕がよくなかったんだ。君は安定しているほうが好きだし、痒いところに手が届くくらいのほうがいいんだよ。快適に暮らしていくほうがいいんだ。わかる気持ちもするな。でも、僕はほんとうに君によくしてあげられなかった……僕のプレッシャーが大きすぎたんだ。社会からのプレッシャー、そして家庭からのプレッシャー……僕は今、君が望むような生活をさせてあげることができない。だから、もしかしたらこんな僕は君にはお似合いじゃないのかもしれない。」彼は暗い表情で言った。
「人に罪を着せようとすれば、その口実はいくらでもある、ってわけね。」私は怒って言った。「こんな口実、男がよく使う手だわ。あなた俗っぽくなっちゃったね。信寧。あなたが私たちの間にもう愛情がなくなったと思うなら、したいようにすればいいわ。」
信寧の顔は青白かった。私は全身が震えた。泣きたかったが涙が出なかった。
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≪愛、、、その後【2−2】≫
2003年11月28日 あるとき、ふと彼の携帯メールを見てしまった。そこには、「信寧、まだ来ないの?あなたのダーリンはここで待っているわ。」と書かれていた。私の怒りの炎が燃え上がった。返信には「僕のダーリン?だれ?」と書いてあった。そして、もう一度メールが来た。「XXXよ。あなたこのあいだ人前で“ダーリン”って呼んだでしょ?やってしまったことは言い逃れはできないわよ!ハハハ!」……
彼は私に説明した。あれは彼の同僚たちの昼休みの遊びだったのだと。マージャンで負けた者が事務所に駆け込んで、ちょうど時間外で文書を作成している彼女に向かって「ダーリン、愛してるよ。」と言うことになっていたのだ。そして結果は、彼が負けた。
私はどうでもよかった。私はジェラシーに身を焦がし、死ぬの生きるのと言って大騒ぎになって、信寧との何度目かの戦争が開始されたのだ。今度の戦争は2ヶ月後やっと収束した。このとき信寧はこんなことを言い出した。省都に転勤しようかと思っていると。彼はコンピューターを勉強していたし、そこのIT産業は彼にもっと大きな活躍のチャンスを与えてくれるだろう。
私は賛成しなかった。私には私たちが今いる海岸の町が美しくて愛すべきものであり、快適で暖かく感じられた。その上私がいちばん恐れていたのは、そんなにぎやかな都市に行ってしまったら、私は自分自信にもっと自信が持てなくなるだろうし、信寧に対する信頼も薄れていくのではないかということだった。私は彼に負ければすべてを失ってしまうだろうと思った。
written by 草戒指
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003103115192774
彼は私に説明した。あれは彼の同僚たちの昼休みの遊びだったのだと。マージャンで負けた者が事務所に駆け込んで、ちょうど時間外で文書を作成している彼女に向かって「ダーリン、愛してるよ。」と言うことになっていたのだ。そして結果は、彼が負けた。
私はどうでもよかった。私はジェラシーに身を焦がし、死ぬの生きるのと言って大騒ぎになって、信寧との何度目かの戦争が開始されたのだ。今度の戦争は2ヶ月後やっと収束した。このとき信寧はこんなことを言い出した。省都に転勤しようかと思っていると。彼はコンピューターを勉強していたし、そこのIT産業は彼にもっと大きな活躍のチャンスを与えてくれるだろう。
私は賛成しなかった。私には私たちが今いる海岸の町が美しくて愛すべきものであり、快適で暖かく感じられた。その上私がいちばん恐れていたのは、そんなにぎやかな都市に行ってしまったら、私は自分自信にもっと自信が持てなくなるだろうし、信寧に対する信頼も薄れていくのではないかということだった。私は彼に負ければすべてを失ってしまうだろうと思った。
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≪愛、、、その後【1−6】≫
2003年11月26日 「彼女は元気だよ……僕たち……12月に結婚するんだ。」
私はさっと立ちあがると、背を向けて窓のところへ行った。「寒いね。窓閉めなきゃね……雨が吹き込むわ……昨日までは天気よかったのにね。今日はこの雨ですっかり秋ね。」私は窓辺に立って、秋の清冽な雨と風の中に顔を置いて、涙の流れるままに任せていた。
彼もやってきて、私の後ろに立った。「泣いてるの?」
「ううん、砂が……。」私はのどが詰まってうまく話せなかった。
「君はいつもこうだな。」彼はしょうがないな、という感じで言った。「泣くときはいつも砂が入ったって。」
「あなた、もう行ってちょうだい。」私は振り向いて彼を見ることはなかった。
かなりの時間が過ぎ、ドアが開いて、また閉まった。―――今度こそ彼が行ってしまったのがわかった。
窓の外は雨が激しさを増していた。私は信寧の後姿が雨の中にゆっくりと消えていくのをじっと見つめていた。ゆっくりと窓を閉めると、いつ割れたのかガラスに何すじかひびが入っていた。そしていろいろなものが入り混じった彼との関係も、ガラスのように壊れやすかった……
written by 草戒指
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私はさっと立ちあがると、背を向けて窓のところへ行った。「寒いね。窓閉めなきゃね……雨が吹き込むわ……昨日までは天気よかったのにね。今日はこの雨ですっかり秋ね。」私は窓辺に立って、秋の清冽な雨と風の中に顔を置いて、涙の流れるままに任せていた。
彼もやってきて、私の後ろに立った。「泣いてるの?」
「ううん、砂が……。」私はのどが詰まってうまく話せなかった。
「君はいつもこうだな。」彼はしょうがないな、という感じで言った。「泣くときはいつも砂が入ったって。」
「あなた、もう行ってちょうだい。」私は振り向いて彼を見ることはなかった。
かなりの時間が過ぎ、ドアが開いて、また閉まった。―――今度こそ彼が行ってしまったのがわかった。
窓の外は雨が激しさを増していた。私は信寧の後姿が雨の中にゆっくりと消えていくのをじっと見つめていた。ゆっくりと窓を閉めると、いつ割れたのかガラスに何すじかひびが入っていた。そしていろいろなものが入り混じった彼との関係も、ガラスのように壊れやすかった……
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≪愛、、、その後【1−5】≫
2003年11月25日 私はベッドのふちに座った。ドアが開く音がした。そして、重々しい音が響いて――――彼は出ていった。
私ははだしで応接間まで走っていった。するとなんと、彼はまだドアのところに立っていた。
すべては時間が逆流してしまったようなひとコマだった。あのころは、私たちふたりはけんかをすると、最後はいつも私がベッドまで走っていっては泣いていた。彼がドアをバシンと閉めて走って出ていったかと思うと、実はドアのところに彼が立っている、いつもそんなふうだった。そんなとき、彼は笑いながら「ほらね、やっぱり僕のこと捨てられないだろ?」
しかし、今は、彼はただ呆然としているだけだった。
以前感じたことのある感傷が突然よみがえった。私はボソッと言った。「ごめんなさい。」
彼は黙って戻ってきて、私の前に立った。彼は昔のままで背が高くかっこよかったが、私はと言えば力なくやつれていた。
「君、ずいぶんやせたな。」彼の声はかすれていた。
私はわざとかっこつけて肩をすくめて見せた。「ずいぶんやせただけじゃなく、年もとったし、醜くなったわ。女って……ちょっと気を緩めると盛りはすぐに過ぎちゃうのよ。蝶でさえ哀れんでくれてるってさ。」ソファーに戻り、あぐらをかいて身をすくめた。
彼は近づいてきて、もうひとつのソファーに座った。
「ここ何年か、君は……元気だったの?」彼は尋ねた。
「貧乏に苦しみ羽根打ち枯らす、ってところよ。書き物をして生活して……元気だとか元気じゃないとかいう代物じゃないわ。なんとかやっと暮らしてきたってところね……。」私は自嘲気味に言った。
「君は、あの雑誌社ではもう働いていないの?あの雑誌だけが君の消息を知る手がかりだったのに。君の名前があれば、まだ頑張ってるんだなってわかったのに。あの後、あの雑誌、以前君が担当していたコーナーの編集者が変わって……。」
「私はもうあの町にはいられなくなったのよ。」私は感傷的になって言った。「だから、フリーライターにもどって、そこらじゅうをさすらっているの。」
「なぜこんなところに?」
「最近精神的にまいってきて、ここで静養してるの。ここは空気もいいし、やさしい人ばかりよ。ストレスなんてないわ。」私はまじめに答えていた。そして耐えきれずに聞いた。「あなたは?」
「まあまあさ。毎日忙しい。」
「彼女は?」私はうつむいた。
written by 草戒指
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私ははだしで応接間まで走っていった。するとなんと、彼はまだドアのところに立っていた。
すべては時間が逆流してしまったようなひとコマだった。あのころは、私たちふたりはけんかをすると、最後はいつも私がベッドまで走っていっては泣いていた。彼がドアをバシンと閉めて走って出ていったかと思うと、実はドアのところに彼が立っている、いつもそんなふうだった。そんなとき、彼は笑いながら「ほらね、やっぱり僕のこと捨てられないだろ?」
しかし、今は、彼はただ呆然としているだけだった。
以前感じたことのある感傷が突然よみがえった。私はボソッと言った。「ごめんなさい。」
彼は黙って戻ってきて、私の前に立った。彼は昔のままで背が高くかっこよかったが、私はと言えば力なくやつれていた。
「君、ずいぶんやせたな。」彼の声はかすれていた。
私はわざとかっこつけて肩をすくめて見せた。「ずいぶんやせただけじゃなく、年もとったし、醜くなったわ。女って……ちょっと気を緩めると盛りはすぐに過ぎちゃうのよ。蝶でさえ哀れんでくれてるってさ。」ソファーに戻り、あぐらをかいて身をすくめた。
彼は近づいてきて、もうひとつのソファーに座った。
「ここ何年か、君は……元気だったの?」彼は尋ねた。
「貧乏に苦しみ羽根打ち枯らす、ってところよ。書き物をして生活して……元気だとか元気じゃないとかいう代物じゃないわ。なんとかやっと暮らしてきたってところね……。」私は自嘲気味に言った。
「君は、あの雑誌社ではもう働いていないの?あの雑誌だけが君の消息を知る手がかりだったのに。君の名前があれば、まだ頑張ってるんだなってわかったのに。あの後、あの雑誌、以前君が担当していたコーナーの編集者が変わって……。」
「私はもうあの町にはいられなくなったのよ。」私は感傷的になって言った。「だから、フリーライターにもどって、そこらじゅうをさすらっているの。」
「なぜこんなところに?」
「最近精神的にまいってきて、ここで静養してるの。ここは空気もいいし、やさしい人ばかりよ。ストレスなんてないわ。」私はまじめに答えていた。そして耐えきれずに聞いた。「あなたは?」
「まあまあさ。毎日忙しい。」
「彼女は?」私はうつむいた。
written by 草戒指
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≪愛、、、その後【1−4】≫
2003年11月24日 その場には固まったような沈黙が流れていた。聞こえるのは阿霧がブツブツ言っているたわごとだけだった。「阿凱……私もうダメ……連れて帰って……助けて……」
「阿霧、ベッドで寝なさいね。」私は小声で言うと、彼女の重いからだを抱き起こした。信寧は急いでやってきて、私が阿霧を抱き起こすのを手伝ってくれた。そしてなにかいい言い訳が見つかったかのように、彼は急いで言った。「僕は彼女のことは知らないんだ。僕はここへあることを調べに来たんだ。……僕の大学の同級生がここで教えているので、彼とバーで会っていたんだ。君の友達は僕の同級生を知っていて、彼らはどっちも酔っていた。店で酒のビンを倒して……女の子は彼女だけだったので、僕はまず彼女を送り届けに来たのさ。君がここにいるなんて知らなかった……。」
私は力いっぱい阿霧を支えている彼の手を振り払った。「どう…も、私が自分でやるから。すみません、せっかくの計画のおじゃまをしちゃって!」
彼は怒ってしまって何も言わなくなった。長い時間がたって低くつぶやいた。「俺ってそんなに最低な人間か?君も、なんだってこんなに相変わらずなんだ!」
「ごめんなさい、私はごらんのとおり相変わらずよ。」私は冷笑しながら、声を荒げた。「あなた、私がここにいるのを知らなかったって強調することはないのよ。私は身の程をわきまえてるし、あなたが遠路はるばる下心ありで私を尋ねてくるなんて思うわけないでしょ!反対に会いたくない者同士が出くわしてしまって、知らないうちに身の引き場所がなくなってしまったってわけよ。さあ、もう行っていいわよ。早く行きなさい!」
私は歯を食いしばって阿霧をベッドのところまで引きずっていった。心の中ではもうひとりの私が悲しげに「彼はもうあなたとは関係ない人でしょ?どうしてそんなに彼の言葉の一字一句を意識しするのよ?あなたたちがいっしょにいると、お互いを傷つけ会うだけだわ……。」と話しかけた。
written by 草戒指
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003103115192774
「阿霧、ベッドで寝なさいね。」私は小声で言うと、彼女の重いからだを抱き起こした。信寧は急いでやってきて、私が阿霧を抱き起こすのを手伝ってくれた。そしてなにかいい言い訳が見つかったかのように、彼は急いで言った。「僕は彼女のことは知らないんだ。僕はここへあることを調べに来たんだ。……僕の大学の同級生がここで教えているので、彼とバーで会っていたんだ。君の友達は僕の同級生を知っていて、彼らはどっちも酔っていた。店で酒のビンを倒して……女の子は彼女だけだったので、僕はまず彼女を送り届けに来たのさ。君がここにいるなんて知らなかった……。」
私は力いっぱい阿霧を支えている彼の手を振り払った。「どう…も、私が自分でやるから。すみません、せっかくの計画のおじゃまをしちゃって!」
彼は怒ってしまって何も言わなくなった。長い時間がたって低くつぶやいた。「俺ってそんなに最低な人間か?君も、なんだってこんなに相変わらずなんだ!」
「ごめんなさい、私はごらんのとおり相変わらずよ。」私は冷笑しながら、声を荒げた。「あなた、私がここにいるのを知らなかったって強調することはないのよ。私は身の程をわきまえてるし、あなたが遠路はるばる下心ありで私を尋ねてくるなんて思うわけないでしょ!反対に会いたくない者同士が出くわしてしまって、知らないうちに身の引き場所がなくなってしまったってわけよ。さあ、もう行っていいわよ。早く行きなさい!」
私は歯を食いしばって阿霧をベッドのところまで引きずっていった。心の中ではもうひとりの私が悲しげに「彼はもうあなたとは関係ない人でしょ?どうしてそんなに彼の言葉の一字一句を意識しするのよ?あなたたちがいっしょにいると、お互いを傷つけ会うだけだわ……。」と話しかけた。
written by 草戒指
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≪愛、、、その後【1−1】≫
2003年11月19日 夜中の0時45分。
窓の外の風雨は激しさを増していた。阿霧はどこで飲んだくれているのか、まだ帰ってこない。阿霧は私の大学時代の友達で、最近失恋したばかりだ。その日の夜中、荷物を担いで私のところに転がり込んだ―――相手は奥さんのいる男、ほしいものは何でも手に入れ、飽くことのない貪欲さ、最後にはボロ雑巾のように捨てられ、そ知らぬ顔で振り向きもせずに去っていった。
そして私は静養のために友達に青澳湾でひとり用の部屋を探してもらい、閑なときは地方紙に原稿を書いていた。彼女は休暇を取って私のところに来た。ひとつには気晴らしのため、もうひとつには避難場所を求めて―――彼女にとってはこれは大きな災難でからだじゅう傷だらけ、心は木っ端微塵になってしまったのだと言う。
私はパソコンの打ち終わったばかりの原稿を保存し、背伸びをし、歯でも磨いて寝ようと思っているところだった。
このとき、ドアのベルがなり、私はスリッパをひっかけてドアを開けた。そこには酔っぱらった阿霧が男の肩によりかかっていた。
「あらぁ阿霧、また酔っぱらっちゃったのね。」私は首を振った。その男は私が阿霧を支えて応接間のソファーまで連れて行くのを手伝ってくれた。私は阿霧の靴とコートを脱がせた。洗面器に水を入れて彼女の顔を拭いて酔いを覚ましてやろうと思っていると、突然その男が応接間の隅に立っているのが目に入った。彼は明かりを背にしていたので顔ははっきり見えなかった。私はあまり深く考えていなかったし、阿霧の私生活には興味がなかったのだが。
written by 草戒指
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003103115192774
窓の外の風雨は激しさを増していた。阿霧はどこで飲んだくれているのか、まだ帰ってこない。阿霧は私の大学時代の友達で、最近失恋したばかりだ。その日の夜中、荷物を担いで私のところに転がり込んだ―――相手は奥さんのいる男、ほしいものは何でも手に入れ、飽くことのない貪欲さ、最後にはボロ雑巾のように捨てられ、そ知らぬ顔で振り向きもせずに去っていった。
そして私は静養のために友達に青澳湾でひとり用の部屋を探してもらい、閑なときは地方紙に原稿を書いていた。彼女は休暇を取って私のところに来た。ひとつには気晴らしのため、もうひとつには避難場所を求めて―――彼女にとってはこれは大きな災難でからだじゅう傷だらけ、心は木っ端微塵になってしまったのだと言う。
私はパソコンの打ち終わったばかりの原稿を保存し、背伸びをし、歯でも磨いて寝ようと思っているところだった。
このとき、ドアのベルがなり、私はスリッパをひっかけてドアを開けた。そこには酔っぱらった阿霧が男の肩によりかかっていた。
「あらぁ阿霧、また酔っぱらっちゃったのね。」私は首を振った。その男は私が阿霧を支えて応接間のソファーまで連れて行くのを手伝ってくれた。私は阿霧の靴とコートを脱がせた。洗面器に水を入れて彼女の顔を拭いて酔いを覚ましてやろうと思っていると、突然その男が応接間の隅に立っているのが目に入った。彼は明かりを背にしていたので顔ははっきり見えなかった。私はあまり深く考えていなかったし、阿霧の私生活には興味がなかったのだが。
written by 草戒指
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003103115192774
≪子供時代≫
2003年11月18日 現代の子供たちはすばらしい生活をしている。彼らはものをたいせつにするということを少しも知らず、しばしば“おぼっちゃま風”を吹かせて、おじいちゃんやおばあちゃんを殴ったりする。私はこのような様子を見ると心が痛む。どうして今の子供たちはこんなふうになってしまったのだろう。
私が4歳ぐらいのときに、母といっしょに町に出たときのことを覚えている。その日は気温も高かった。アイスキャンディーの売店を見つけ、ほかの子がアイスキャンディーを食べているのを見て、私もだだをこねて母にねだった。「私もアイスキャンディーがほしいよ、おかあさん買って。」母は私のおねだりをやりすごせず、私に言った。「いいものを見つけたね。もぐりこんでキャンディー買ってきてあげるわ。」
そしてキャンディーは買ってきてもらったものの、母は私のキャンディーを買っている最中に財布をスリに盗まれてしまったのだ。その当時家は貧しく、毎月父が稼いでくる数10元あまりの給料しか収入はなかった。母が私にアイスキャンディーを買って食べさせたおかげで、財布をすられたというこの一件は私に大きな影響を与えた。小学校に上がってからも、気の合う友達といっしょに、よく廃品を拾って売り、自分の小遣いに当てていた。親に小遣いをねだったことなどなかった。このように、明るい笑いは少なかったが、子供時代に自力で生きていく経験を積んだのだった。
written by Amy
http://eggtown.gaiax.com/home/amycn
中国語原文
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Hinoki/4558/youyitian/tongniandoc.htm
私が4歳ぐらいのときに、母といっしょに町に出たときのことを覚えている。その日は気温も高かった。アイスキャンディーの売店を見つけ、ほかの子がアイスキャンディーを食べているのを見て、私もだだをこねて母にねだった。「私もアイスキャンディーがほしいよ、おかあさん買って。」母は私のおねだりをやりすごせず、私に言った。「いいものを見つけたね。もぐりこんでキャンディー買ってきてあげるわ。」
そしてキャンディーは買ってきてもらったものの、母は私のキャンディーを買っている最中に財布をスリに盗まれてしまったのだ。その当時家は貧しく、毎月父が稼いでくる数10元あまりの給料しか収入はなかった。母が私にアイスキャンディーを買って食べさせたおかげで、財布をすられたというこの一件は私に大きな影響を与えた。小学校に上がってからも、気の合う友達といっしょに、よく廃品を拾って売り、自分の小遣いに当てていた。親に小遣いをねだったことなどなかった。このように、明るい笑いは少なかったが、子供時代に自力で生きていく経験を積んだのだった。
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中国語原文
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≪電話≫
2003年11月17日 ある夕暮れ時、携帯電話の電池が切れた。私はしかたなく道端のテレフォンカード電話BOXで電話をかけた。
ゆっくりとバッグの中からメモ帳を取り出していると、知らないうちにそばにふたりの人が寄ってきた。ひとりは安全帽をかぶり、もうひとりは安全帽を手に取ろうとしていた。脚の安全靴は泥にまみれていた。おそらく近くの工事現場で働く民工だろう。彼らは電話BOXの周りをキョロキョロ見まわして、ひと回りした。それから私のほうに向かってきた。私は無意識のうちにバッグを服の中に入れ、携帯電話を右手で隠した。手持ちのお金はそれほどなかったが、盗まれでもしたらやはり損だ。
彼らは私の目の前で立ち止まり、からだを前かがみにして、じっと私のメモ帳をのぞきこんだ。私はまた、無意識にメモ帳を閉じた。普段からプライバシーを探られるのがいちばん嫌いだし、見知らぬ人に自分のものを見られるのなんてもっと嫌だった。そして、ひとりが口を開いた。「すみません、甘粛省の天水市の市外局番をご存知ですか?」私はこの時やっと、ふたりが手に一枚ずつテレフォンカードを持っているのに気づいた。私はメモ帳の初めの資料を開き、彼らに教えてあげた。そのあと、そのうちのひとりと話していたのだが、そう、彼らの実家には2週間前にやっと電話が設置されたのだそうだ。その前はずっと手紙で連絡をとっていたという。今日は週末で、家のお年寄りと妻子に電話をかけるのだとのこと。そうだ。彼らの給料の一円一銭はすべて血と汗にまみれたもの。長距離電話料は彼らにとっては高すぎる。それで手紙を書くしかなかったのだ。でも、それとてむずかしいこと。一日働きづめでもう疲れきっているはず。それに、彼らが普通住んでいる、工事現場のプレハブは暗くて低い建物だ。そこで工事道具ならまだしも、ペンや紙を探そうと思ったって、簡単ではないはずだ。電話をするのが家族に対して思いを伝えるいちばんいい方法。彼らの苦労や疲労はすべて年末に給料を持ち帰って家族と団欒するため。これが彼らが故郷を後にした理由。
電話をかけ終わって、彼らは私に礼を言い、足早に去っていった。私はバッグを持って、なにやら恥ずかしさを感じていた。
written by Amy
http://eggtown.gaiax.com/home/amycn
中国語原文
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Hinoki/4558/youyitian/dadianhuadoc.htm
ゆっくりとバッグの中からメモ帳を取り出していると、知らないうちにそばにふたりの人が寄ってきた。ひとりは安全帽をかぶり、もうひとりは安全帽を手に取ろうとしていた。脚の安全靴は泥にまみれていた。おそらく近くの工事現場で働く民工だろう。彼らは電話BOXの周りをキョロキョロ見まわして、ひと回りした。それから私のほうに向かってきた。私は無意識のうちにバッグを服の中に入れ、携帯電話を右手で隠した。手持ちのお金はそれほどなかったが、盗まれでもしたらやはり損だ。
彼らは私の目の前で立ち止まり、からだを前かがみにして、じっと私のメモ帳をのぞきこんだ。私はまた、無意識にメモ帳を閉じた。普段からプライバシーを探られるのがいちばん嫌いだし、見知らぬ人に自分のものを見られるのなんてもっと嫌だった。そして、ひとりが口を開いた。「すみません、甘粛省の天水市の市外局番をご存知ですか?」私はこの時やっと、ふたりが手に一枚ずつテレフォンカードを持っているのに気づいた。私はメモ帳の初めの資料を開き、彼らに教えてあげた。そのあと、そのうちのひとりと話していたのだが、そう、彼らの実家には2週間前にやっと電話が設置されたのだそうだ。その前はずっと手紙で連絡をとっていたという。今日は週末で、家のお年寄りと妻子に電話をかけるのだとのこと。そうだ。彼らの給料の一円一銭はすべて血と汗にまみれたもの。長距離電話料は彼らにとっては高すぎる。それで手紙を書くしかなかったのだ。でも、それとてむずかしいこと。一日働きづめでもう疲れきっているはず。それに、彼らが普通住んでいる、工事現場のプレハブは暗くて低い建物だ。そこで工事道具ならまだしも、ペンや紙を探そうと思ったって、簡単ではないはずだ。電話をするのが家族に対して思いを伝えるいちばんいい方法。彼らの苦労や疲労はすべて年末に給料を持ち帰って家族と団欒するため。これが彼らが故郷を後にした理由。
電話をかけ終わって、彼らは私に礼を言い、足早に去っていった。私はバッグを持って、なにやら恥ずかしさを感じていた。
written by Amy
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中国語原文
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≪老外【2】≫
2003年11月16日 平安保険公司ビルの前に着き、バスは停まった。運転手が老人に降りるように怒鳴ると、老人は小声で言った。
「まだ6元が・・・」
しばらくすると、ほかの乗客たちが催促し始めた。運転手には大声で怒鳴り、なかなか降りようとしない老人を責めた。
「おいおい、僕が先につり銭をあげるよ。シンセン大学で降りるから、ほかの人からお金を集めておくよ。」
突然ある人が騒ぎを静めた。私はこれはいい方法だと思った。話している人を振り返って見てみると、なんと若い外国人だった。彼は中国通らしく、普通話も流暢だった。
老人は彼が取り出してくれた6元を受け取ると、丁寧にお礼を言ってバスを降りて行った。
やっとバスは再び走り始めた。乗客たちはみなため息をついた。奇妙なことに、八卦嶺を出てから、ずっとひとりの乗客も乗って来なかった。シンセン大学に着くまで、その外国人は1元も取り戻すことができなかったのだ!
バスは停まり、彼はバスを飛び降り、行ってしまった。
「頭がおかしいんじゃないのか!」
外人さんが遠のいてから、運転手は彼の後姿に向って言った。乗客たちも続いて言った。
「けっ、外人というのは頭がおかしいものさ!」
その一瞬、私の心は突然動いた。多くの外国にこびた言い方は元来嫌いなのだが、そのとき私は思った。外国の月は中国ほどきっと丸くはないのだろうが、少なからぬ外国人の心はほんとうは、私たちの心より丸いのではないか。−−−私たちの中の少なからぬ者の心は、名誉と利益の誘惑で欠け始めているのではないか。欠けたものは善良さ、同情などの昔からの美徳ではないのか。あの外国人は頭がおかしいのでは決してなく、おろかなのでもない。彼が失ったのはたかだか6元。得たものは老人のこの上のない感激と自らが人を助けたという喜び。名誉と利益の計算が美徳の得失を上回ると考えている人の心のほうがほんとうは「おかしい」のだ。おそらくそういう欲は、深いところまで心を侵し、どのような薬でも治すことができないだろう。
善良な行いをした人をあざ笑ってはいけない。そのような行為は私たちの欠けた心を治してくれる処方箋なのだから。
written by Amy
http://eggtown.gaiax.com/home/amycn
中国語原文
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Hinoki/4558/youyitian/laowaidoc.htm
「まだ6元が・・・」
しばらくすると、ほかの乗客たちが催促し始めた。運転手には大声で怒鳴り、なかなか降りようとしない老人を責めた。
「おいおい、僕が先につり銭をあげるよ。シンセン大学で降りるから、ほかの人からお金を集めておくよ。」
突然ある人が騒ぎを静めた。私はこれはいい方法だと思った。話している人を振り返って見てみると、なんと若い外国人だった。彼は中国通らしく、普通話も流暢だった。
老人は彼が取り出してくれた6元を受け取ると、丁寧にお礼を言ってバスを降りて行った。
やっとバスは再び走り始めた。乗客たちはみなため息をついた。奇妙なことに、八卦嶺を出てから、ずっとひとりの乗客も乗って来なかった。シンセン大学に着くまで、その外国人は1元も取り戻すことができなかったのだ!
バスは停まり、彼はバスを飛び降り、行ってしまった。
「頭がおかしいんじゃないのか!」
外人さんが遠のいてから、運転手は彼の後姿に向って言った。乗客たちも続いて言った。
「けっ、外人というのは頭がおかしいものさ!」
その一瞬、私の心は突然動いた。多くの外国にこびた言い方は元来嫌いなのだが、そのとき私は思った。外国の月は中国ほどきっと丸くはないのだろうが、少なからぬ外国人の心はほんとうは、私たちの心より丸いのではないか。−−−私たちの中の少なからぬ者の心は、名誉と利益の誘惑で欠け始めているのではないか。欠けたものは善良さ、同情などの昔からの美徳ではないのか。あの外国人は頭がおかしいのでは決してなく、おろかなのでもない。彼が失ったのはたかだか6元。得たものは老人のこの上のない感激と自らが人を助けたという喜び。名誉と利益の計算が美徳の得失を上回ると考えている人の心のほうがほんとうは「おかしい」のだ。おそらくそういう欲は、深いところまで心を侵し、どのような薬でも治すことができないだろう。
善良な行いをした人をあざ笑ってはいけない。そのような行為は私たちの欠けた心を治してくれる処方箋なのだから。
written by Amy
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中国語原文
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Hinoki/4558/youyitian/laowaidoc.htm
≪老外【1】≫
2003年11月15日 布吉税関から462路線の中型バスに乗って南頭に向かっていた。バスが税関停留所から出発してほどなく、ひとりの老人が乗り込んできた。
顔は皺だらけ、手には蛇皮の袋を提げていた。どうやら田舎からシンセンに出稼ぎに来ている民工らしい。
運転手は乗降口に立っている老人に何度も怒鳴った。
「どこまで行くんだ?早くお金を入れなさい。自分で席を探して座るんだ。前に警察がいるから、停まっていると罰金を払わなきゃなんない・・・」
「ええと、八卦嶺の平安保険公司までいくんじゃが、おいくらかな?」「2元。」
老人はお金を長い間もそもそと探していたが、ようやく1元硬貨1枚と10元札1枚を取り出して、遠慮しながら尋ねた。
「おつりはありますかな?ワシは細かいのがなくて。」
運転手はキッパリと言った。「ない。」
老人はますます遠慮して、運転手の後姿に向かって恐る恐る尋ねた。
「細かいのを1元しか持っておらんのじゃが、1元まけてくださらんかの。」
運転手はあきらかにイライラしていた。
「だめだ。みんなおまえさんのようにしていると、オレたちは食い上げだ・・・10元入れて、自分で後から乗ってくる人から乗車賃を集めるんだな。」
老人は、とうとうびくびくしながら乗車賃入れに10元入れるハメになった。運転手が警察が来るぞと何度も言うので、しかたなく、後から乗ってくる人から乗車賃を集めるために、乗降口の近くの通路でしゃがんで待っていた。残念なことに、八卦三路までに、たったひとりすぐ降りる乗客が乗って来ただけで、彼はたった2元しか手にできなかった。彼が降りる停留所がだんだん近づいてくるにつれて、焦りが表れてきた。−−−まだ6元足らないのだ。
written by Amy
http://eggtown.gaiax.com/home/amycn
中国語原文
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Hinoki/4558/youyitian/laowaidoc.htm
顔は皺だらけ、手には蛇皮の袋を提げていた。どうやら田舎からシンセンに出稼ぎに来ている民工らしい。
運転手は乗降口に立っている老人に何度も怒鳴った。
「どこまで行くんだ?早くお金を入れなさい。自分で席を探して座るんだ。前に警察がいるから、停まっていると罰金を払わなきゃなんない・・・」
「ええと、八卦嶺の平安保険公司までいくんじゃが、おいくらかな?」「2元。」
老人はお金を長い間もそもそと探していたが、ようやく1元硬貨1枚と10元札1枚を取り出して、遠慮しながら尋ねた。
「おつりはありますかな?ワシは細かいのがなくて。」
運転手はキッパリと言った。「ない。」
老人はますます遠慮して、運転手の後姿に向かって恐る恐る尋ねた。
「細かいのを1元しか持っておらんのじゃが、1元まけてくださらんかの。」
運転手はあきらかにイライラしていた。
「だめだ。みんなおまえさんのようにしていると、オレたちは食い上げだ・・・10元入れて、自分で後から乗ってくる人から乗車賃を集めるんだな。」
老人は、とうとうびくびくしながら乗車賃入れに10元入れるハメになった。運転手が警察が来るぞと何度も言うので、しかたなく、後から乗ってくる人から乗車賃を集めるために、乗降口の近くの通路でしゃがんで待っていた。残念なことに、八卦三路までに、たったひとりすぐ降りる乗客が乗って来ただけで、彼はたった2元しか手にできなかった。彼が降りる停留所がだんだん近づいてくるにつれて、焦りが表れてきた。−−−まだ6元足らないのだ。
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≪天国へのHappy Birthday【最終回】≫
2003年11月14日 虹雨の最後の手紙は香港返還が近づいたころに届いた。私は文末のあの言葉をまだ覚えている。
---「香港返還の日を待ち望んでいます!」
実は、香港返還の日がちょうど虹雨の誕生日だということを私は知っていた。彼は「お嬢ちゃん」が祝ってくれるのを期待していた。
私が高校入試の試験場から疲れて戻り、ため息をついた。まあまあだな!いちばん初めにしなければならないことは虹雨に報告することだ。彼の激励と応援のおかげで、私はもうすでに入試を終えたのだ。そして「お嬢ちゃん」の誕生祝を届けなければ!私は一生懸命作ったバースデーカードを送った。カードの絵の花びらにはどれも私の心からのお祝いと願いがいっぱいこめられていた。
私は静かに虹雨の返事を待っていた。彼がカードを見て喜ぶ姿を想像しながら。結局私が待っていたのは、虹雨が亡くなったという知らせだったなんて、想像できるはずもなかった。彼のお姉さんが教えてくれた。彼は都会の車の流れの中に消えていったのだと……そして、彼の日記からわかったのだが、彼とあんなに長い間連絡をとりつづけた女の子はのは、「お嬢ちゃん」だけだった。私はこんな残酷な現実を全く受け入れることができなかった。悪夢を見ているようだった。でも、現実は残酷、受け入れざるを得なかった。なぜ虹雨が去ってしまう前に、なにかの予兆を残していってくれなかったのか、と思ってはみたが、私たちが気持の通じ合った友達であることに間違いはない。
こんなふうに、彼は逝ってしまった。静かに静かに逝ってしまった。私にたいせつな言葉を残してくれもせずに。その日、私は虹雨に関係のある手紙を全部燃やしてしまった。彼に関係するどんなものも、私の感傷を呼び起こしたりしないように。手紙は火の中でひとひらひとひら黒い蝶になって、風に舞い上げられた。哀しい思い出の踊りを踊りながら……
その後毎年7月になると、私はいつも虹雨にバースデーカードを出すことにしている。全く意味がないかもしれないけれど。でも、天国の虹雨はまだそれを待っているのだから。
虹雨、私のお祝いの言葉は届きましたか?
written by 喬群
http://dazhou.tougao.com/list.asp?id=897
---「香港返還の日を待ち望んでいます!」
実は、香港返還の日がちょうど虹雨の誕生日だということを私は知っていた。彼は「お嬢ちゃん」が祝ってくれるのを期待していた。
私が高校入試の試験場から疲れて戻り、ため息をついた。まあまあだな!いちばん初めにしなければならないことは虹雨に報告することだ。彼の激励と応援のおかげで、私はもうすでに入試を終えたのだ。そして「お嬢ちゃん」の誕生祝を届けなければ!私は一生懸命作ったバースデーカードを送った。カードの絵の花びらにはどれも私の心からのお祝いと願いがいっぱいこめられていた。
私は静かに虹雨の返事を待っていた。彼がカードを見て喜ぶ姿を想像しながら。結局私が待っていたのは、虹雨が亡くなったという知らせだったなんて、想像できるはずもなかった。彼のお姉さんが教えてくれた。彼は都会の車の流れの中に消えていったのだと……そして、彼の日記からわかったのだが、彼とあんなに長い間連絡をとりつづけた女の子はのは、「お嬢ちゃん」だけだった。私はこんな残酷な現実を全く受け入れることができなかった。悪夢を見ているようだった。でも、現実は残酷、受け入れざるを得なかった。なぜ虹雨が去ってしまう前に、なにかの予兆を残していってくれなかったのか、と思ってはみたが、私たちが気持の通じ合った友達であることに間違いはない。
こんなふうに、彼は逝ってしまった。静かに静かに逝ってしまった。私にたいせつな言葉を残してくれもせずに。その日、私は虹雨に関係のある手紙を全部燃やしてしまった。彼に関係するどんなものも、私の感傷を呼び起こしたりしないように。手紙は火の中でひとひらひとひら黒い蝶になって、風に舞い上げられた。哀しい思い出の踊りを踊りながら……
その後毎年7月になると、私はいつも虹雨にバースデーカードを出すことにしている。全く意味がないかもしれないけれど。でも、天国の虹雨はまだそれを待っているのだから。
虹雨、私のお祝いの言葉は届きましたか?
written by 喬群
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≪天国へのHappy Birthday【4】≫
2003年11月13日 手紙のやり取りが進むにつれて、ある日とうとう虹雨は私に写真を送りたいと言い出した。そして私の写真も送ってほしいと。その時、虹雨の姿をとても見てみたいと思ったけど、そんな考えはやはりやめにした。以前にある雑誌で、こんな話を読んだことがあったから。
ある男の子と女の子が文通をしていた。2人はとても気が合っていた。彼らはお互いに気心がわかっている、と思っていた。ある日、彼らは好奇心を抑えきれずに、ある場所で会うことにした。会った後は、知り合ったころの喜びなど忘れて、失望して別れてしまった。お互い、相手が想像と違っていたからだった。そのあとは、手紙のやり取りさえしなくなってしまった。
私はこの話を虹雨にした。
「ほんとうの友達は心と心のつながり、そんな神秘的で美しい雰囲気をこわす必要があるのかしら?」
と言って。虹雨はそのあとの返事の手紙では何も言わなかった。ただ、彼が撮った写真は露出し過ぎで写っていなかった、と書いてあり、その後は2度と写真の話はしなくなった。彼がうまい言い訳をしているのか、それとも・・・それは、わからなかったが、わかりたいとも思わなかった。こんな友情に包まれているだけで、私は充分だったから。虹雨はこうも言った、
「今、友達のパン屋さんを手伝っているんだけど、毎日忙しくて疲れているけど、とっても充実して楽しい。」
それを読んで、私もうれしくなった。何もすることがなく時間をつぶす苦しさを知っているから。日々の生活の中で、頼るところも身をあずけるところもなくひとりでいることなんてできない。そんなことになったら、彼は空しい幻のような脱け殻になってしまうだろう。
written by 喬群
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ある男の子と女の子が文通をしていた。2人はとても気が合っていた。彼らはお互いに気心がわかっている、と思っていた。ある日、彼らは好奇心を抑えきれずに、ある場所で会うことにした。会った後は、知り合ったころの喜びなど忘れて、失望して別れてしまった。お互い、相手が想像と違っていたからだった。そのあとは、手紙のやり取りさえしなくなってしまった。
私はこの話を虹雨にした。
「ほんとうの友達は心と心のつながり、そんな神秘的で美しい雰囲気をこわす必要があるのかしら?」
と言って。虹雨はそのあとの返事の手紙では何も言わなかった。ただ、彼が撮った写真は露出し過ぎで写っていなかった、と書いてあり、その後は2度と写真の話はしなくなった。彼がうまい言い訳をしているのか、それとも・・・それは、わからなかったが、わかりたいとも思わなかった。こんな友情に包まれているだけで、私は充分だったから。虹雨はこうも言った、
「今、友達のパン屋さんを手伝っているんだけど、毎日忙しくて疲れているけど、とっても充実して楽しい。」
それを読んで、私もうれしくなった。何もすることがなく時間をつぶす苦しさを知っているから。日々の生活の中で、頼るところも身をあずけるところもなくひとりでいることなんてできない。そんなことになったら、彼は空しい幻のような脱け殻になってしまうだろう。
written by 喬群
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≪天国へのHappy Birthday【3】≫
2003年11月12日 虹雨は2通目の手紙で私のことを「お嬢ちゃん」と呼んだ。そしてそれ以降、私を名前で呼んだことがない。彼は私の手紙から私の子供のような純真さを感じたと言う。私は苦笑いした。私って純真?と自分に尋ねてみた。そんな言葉、私とは無縁だと感じた。自分に対してどうでもよい態度をとるようになってから、「純真さ」とか「ロマンティック」とかいう言葉なんて、私の心からは青春といっしょに葬り去られていた。私はいつも消極的で荒れていた。ものごとに対しても、どうでもいいという態度をとっていた。もしかしたら、こんなのって、かなりおかしなことかもしれない。とうてい16歳の女の子の考えることではない。でも、当時の私はまさにそうだったのだ。虹雨の「お嬢ちゃん」という呼び方が、私を長い悪夢からパッと目覚めさせたようだった。私は危機感を感じた。私はもうこんなふうにはしていられない、と思った。もうそれを理解すべきときが来たのだ。そうしなければ、私の青春は私の荒れ果てた消極さとともに葬り去られるところだった。
「私はやり直さなきゃならない!」
自分に言い聞かせ、虹雨に対しても言った。そして彼に、その「お嬢ちゃん」という呼び方が私をどれだけ揺り動かしたか、を伝えた。
それ以来、私と虹雨は手紙をやり取りし始めた。もしかしたら、私の成績がどん底から回復し始めたのは、彼の応援と助けがあったからかもしれない。生きているということは素敵なことだ、私の心は全く新しい感覚で満ち溢れていた。1日のうちでしなければならないことは山積みだったが、毎日忙しくバタバタと過ごしていても、疲れてどうしようもないことばかりでも、心の中は言い表せないほど充実していて心地よかった。週末になるといつも虹雨の手紙が届く。彼はもう実習のほうは終わっていたのだが、仕事のあてはついておらず、家で待っているしかなかった。彼の表現を借りれば、「家でムダ飯を食って、ムダな時間を過ごす」ということになる。このためか、彼には私に手紙を書く時間がたっぷりあるらしい。どの手紙でも私を激励するのを忘れないし、その上どこからひっぱってきたのか、私の参考になるように学習法をたっぷりと紙数を割いて書いてくれた。虹雨のような友達がいて、私はとてもうれしかった。彼が私のためにしてくれた全てのことに感動していた。
written by 喬群
http://dazhou.tougao.com/list.asp?id=897
「私はやり直さなきゃならない!」
自分に言い聞かせ、虹雨に対しても言った。そして彼に、その「お嬢ちゃん」という呼び方が私をどれだけ揺り動かしたか、を伝えた。
それ以来、私と虹雨は手紙をやり取りし始めた。もしかしたら、私の成績がどん底から回復し始めたのは、彼の応援と助けがあったからかもしれない。生きているということは素敵なことだ、私の心は全く新しい感覚で満ち溢れていた。1日のうちでしなければならないことは山積みだったが、毎日忙しくバタバタと過ごしていても、疲れてどうしようもないことばかりでも、心の中は言い表せないほど充実していて心地よかった。週末になるといつも虹雨の手紙が届く。彼はもう実習のほうは終わっていたのだが、仕事のあてはついておらず、家で待っているしかなかった。彼の表現を借りれば、「家でムダ飯を食って、ムダな時間を過ごす」ということになる。このためか、彼には私に手紙を書く時間がたっぷりあるらしい。どの手紙でも私を激励するのを忘れないし、その上どこからひっぱってきたのか、私の参考になるように学習法をたっぷりと紙数を割いて書いてくれた。虹雨のような友達がいて、私はとてもうれしかった。彼が私のためにしてくれた全てのことに感動していた。
written by 喬群
http://dazhou.tougao.com/list.asp?id=897
≪天国へのHappy Birthday【2】≫
2003年11月11日 その日の昼、私の席のほうに行ってみると、机の上にそっと1通の手紙が置かれていた。なんと宛名付きで。その瞬間私は言いようのない驚きとうれしさを感じた。すみっこに追いやられ、忘れ去られた私を覚えていてくれた人がいたなんて想像もできなかったのだ。私は封筒の下の方の見知らぬ住所と詩情あふれる名前をながめていた。---虹雨、ドキッとした。きちんと折られた便箋を広げると、私の目に飛び込んできたのは虹雨のたくましくてやさしそうな万年筆の字だった。こんなじょうずな字を書ける人はきっと、やさしい人なのだろう、と言うのが第一印象だった。長い文面を読み終わった。虹雨は石炭技術学校の生徒だった。もうすぐ卒業だという。卒業が近づいてきて、進路に迷っていた。彼は私がある雑誌に発表した詩を見て、わたしと友達になりたくて、手紙を書いてきてくれたのだ。彼の心の底を隠さない告白が私を感動させた。
「…青春を引きとめておくことなんてできないのはわかっています。たとえ青春を引きとめられたとしても、時間が僕を待っていてはくれないでしょう。雪が舞う日、僕は一人で歩いて行きます。もしかしたら、僕の人生は、果てしない海を漂流することになるのかもしれません。でも、僕の心はまだあちこちさまよっています…」
ほとんどいつも、私もこのように思っていたのではなかっただろうか?私はわからなかった。若い私たちが、どうしてこんな早くから、世の中の浮き沈みを感じるのか、虹雨、この友達を私は拒否する理由はない。すぐに私は、返事の手紙を書いた。
written by 喬群
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「…青春を引きとめておくことなんてできないのはわかっています。たとえ青春を引きとめられたとしても、時間が僕を待っていてはくれないでしょう。雪が舞う日、僕は一人で歩いて行きます。もしかしたら、僕の人生は、果てしない海を漂流することになるのかもしれません。でも、僕の心はまだあちこちさまよっています…」
ほとんどいつも、私もこのように思っていたのではなかっただろうか?私はわからなかった。若い私たちが、どうしてこんな早くから、世の中の浮き沈みを感じるのか、虹雨、この友達を私は拒否する理由はない。すぐに私は、返事の手紙を書いた。
written by 喬群
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≪天国へのHappy Birthday【1】≫
2003年11月10日 あの空の果ての赤く染まった雲がもうすぐ消えていこうとするとき、遠くの白いアシの生い茂った水辺をながめていると、水面が、まるで私が若い頃の心のように揺らめいています。芳しい草が生い茂ったあなたのお墓のそばにたたずんで、あなたのために哀しい歌を歌ってあげたい。天国にいるあなたに聞こえるでしょうか?
≪天国への祈り≫〜喬群〜
虹雨、女の子の名前のように聞こえるが、実際は男の子の名前だ。彼は私がまだ会ったことのない友達。虹雨って、あか抜けた背の高い男の子で、ざっくばらんななかにも幼なさが見え隠れする、そんなイメージだ。ほんとうのところは彼がどんな人なのか、私は知らないし、知るすべもない。。。
虹雨を知ったのは16歳の夏だった。そのころ、高校入試が近づいていて、私の成績は…メチャクチャだとは言わないまでも、お世辞にもいいとは言えなかった。自分では進学はもうムリだと思い、そのつもりで自分の時間をのんびりと過ごしていた。勉強なんて関係ない、という態度で。私のような生徒に対しては、先生は首を振りため息を漏らすしかなく、「政治」の授業を何時間か受けた後、自信をなくした私のために「窓際」の席を「割り当てて」もらっていた。---私が「のびのびと成長する」ように、後ろの隅っこのほうを。それ以来、さらにひまになって、大金持ちが巨万の富を浪費するように、時間をつぶしていた。その後、そのぼんやりした状況を脱け出して、人が生活に対して夢や希望を失うことになったらどんなに恐ろしいことかが、やっとわかった。でもその時は、私の日々はそんなふうにいたずらに過ぎて行くだけだった。私は時々自分が宿るべき肉体を持たないフワフワとして空しい幽霊のようなものであるかのように感じていた。私のそんな生活態度を変えてくれたのは、虹雨からの1通の手紙だった。
written by 喬群
http://dazhou.tougao.com/list.asp?id=897
≪天国への祈り≫〜喬群〜
虹雨、女の子の名前のように聞こえるが、実際は男の子の名前だ。彼は私がまだ会ったことのない友達。虹雨って、あか抜けた背の高い男の子で、ざっくばらんななかにも幼なさが見え隠れする、そんなイメージだ。ほんとうのところは彼がどんな人なのか、私は知らないし、知るすべもない。。。
虹雨を知ったのは16歳の夏だった。そのころ、高校入試が近づいていて、私の成績は…メチャクチャだとは言わないまでも、お世辞にもいいとは言えなかった。自分では進学はもうムリだと思い、そのつもりで自分の時間をのんびりと過ごしていた。勉強なんて関係ない、という態度で。私のような生徒に対しては、先生は首を振りため息を漏らすしかなく、「政治」の授業を何時間か受けた後、自信をなくした私のために「窓際」の席を「割り当てて」もらっていた。---私が「のびのびと成長する」ように、後ろの隅っこのほうを。それ以来、さらにひまになって、大金持ちが巨万の富を浪費するように、時間をつぶしていた。その後、そのぼんやりした状況を脱け出して、人が生活に対して夢や希望を失うことになったらどんなに恐ろしいことかが、やっとわかった。でもその時は、私の日々はそんなふうにいたずらに過ぎて行くだけだった。私は時々自分が宿るべき肉体を持たないフワフワとして空しい幽霊のようなものであるかのように感じていた。私のそんな生活態度を変えてくれたのは、虹雨からの1通の手紙だった。
written by 喬群
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≪未完の夢【最終回】≫
2003年11月9日 手紙を閉じると、涙が堰を切ったようにあふれてきた。夢はもう自分がこの難関を通過できないことを予感していたのだろうか?私は自分が恨めしく思われた。彼女は希望を持って帰ってきたのに、無念さを残して別れることになってしまった。どうして私の愛はこんなにも利己的なのだろう。私はほんとうに彼女を愛していたのだろうか?私がいちばん愛していたのは、実は自分自身ではなかったのか。夢はずっと私を受け入れてくれていた。それなのに私は、自分がえらいと思っていた。自分が彼女に幸福を与えている気になっていた。私は世界を創造した神だとでも言うのか?ちがう、何から何まで全部ちがう!
私は赤ん坊をその男に渡した。彼が恐る恐る赤ん坊を抱きかかえるのを見て、彼ならこの子をしっかり育てられると思った。私は別れ際に、最後の一目赤ん坊を見た。彼女は幸せそうに夢を見ていた。夢に似てとてもきれいだった。でも、彼女には平凡に生きてほいと思った。彼は
「心配しないで。ボクが彼女を幸せにします。彼女を平凡に幸せに育てます!」
と真面目な顔で言った。
私は彼の瞳の中に誠実さを見て取った。
「あなたを信じるわ。」
心の中では
「さよなら、夢、さよなら、赤ちゃん。」
と呼びかけていた。
私はひとりでチベットに向かった。これは私と夢の“夢”だったが、私ひとりで実現させることになった。私はチベットに留まり、教師になるつもりだった。これでやっと自分の世界が持てる。私たちの世界だ。
ポタラ宮殿前の広場で、私はその透き通るくらいに青い空を見上げた。空では夢が私に向かって微笑んでいた。そして私はそっと言った。
「待っててね。生まれ変わるまで。」
ひとりのチベットの子供が私の袖を引っ張って、ぎこちない中国語で、無邪気に尋ねた。
「おばちゃん、誰と話してるの?」
「おばちゃんはね、木の葉と話してるんだよ。木の葉はね、今日は天気がいいね、ピクニックにピッタリだよ、って言ってるよ。」
その瞬間、涙がどっとあふれた。
written by 默默般奔pao
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003080817171643
私は赤ん坊をその男に渡した。彼が恐る恐る赤ん坊を抱きかかえるのを見て、彼ならこの子をしっかり育てられると思った。私は別れ際に、最後の一目赤ん坊を見た。彼女は幸せそうに夢を見ていた。夢に似てとてもきれいだった。でも、彼女には平凡に生きてほいと思った。彼は
「心配しないで。ボクが彼女を幸せにします。彼女を平凡に幸せに育てます!」
と真面目な顔で言った。
私は彼の瞳の中に誠実さを見て取った。
「あなたを信じるわ。」
心の中では
「さよなら、夢、さよなら、赤ちゃん。」
と呼びかけていた。
私はひとりでチベットに向かった。これは私と夢の“夢”だったが、私ひとりで実現させることになった。私はチベットに留まり、教師になるつもりだった。これでやっと自分の世界が持てる。私たちの世界だ。
ポタラ宮殿前の広場で、私はその透き通るくらいに青い空を見上げた。空では夢が私に向かって微笑んでいた。そして私はそっと言った。
「待っててね。生まれ変わるまで。」
ひとりのチベットの子供が私の袖を引っ張って、ぎこちない中国語で、無邪気に尋ねた。
「おばちゃん、誰と話してるの?」
「おばちゃんはね、木の葉と話してるんだよ。木の葉はね、今日は天気がいいね、ピクニックにピッタリだよ、って言ってるよ。」
その瞬間、涙がどっとあふれた。
written by 默默般奔pao
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003080817171643
≪未完の夢【第7回】≫
2003年11月7日 私は看護士さんの手から小さな天使を受け取った。彼女は両目を閉じたまま、ツヤツヤした眉をひそめ、尖らせた口からは泡が出ていた。赤ちゃん、あなたはほんとうにお母さんに似ているね。まばたきをすると、涙が赤ちゃんの顔の上にこぼれた。彼女はびっくりして目を開けたが、キャッキャッと笑い出した。その時、私はまた夢に会ったような気がした。赤ちゃん、あなたは夢の生まれ変わりなのね。
夢には親戚がいなかった。私以外には友達もいなかった。葬儀場はがらんとしていた。夢の遺影はとてもきれいだった。長い髪を風になびかせて、顔立ちもよく、エネルギーにあふれ、私が初めて会った頃のように、笑顔がキラキラと輝いていた。奥深いダークブルーの色を浮かべたような眼差しは、人には理解できないような深みを帯びていた。だれがあなたのことを理解できるというのでしょう?
ドアが開いて、入ってきた人がいた。男の人だった。私は直感的に、彼が赤ちゃんの父親だと思った。彼は長い間、夢の前に立ちつくし涙を目に浮かべていた。
彼が近づいてきて、私に一通の手紙を手渡した。
「あなたがSUMMERさんですね。これは夢が私にことづけたものです。彼女はもう自分の身に何かあるのがわかっていたようで、私からあなたに渡してくれるように言っていました。」
written by 默默般奔pao
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003080817171643
夢には親戚がいなかった。私以外には友達もいなかった。葬儀場はがらんとしていた。夢の遺影はとてもきれいだった。長い髪を風になびかせて、顔立ちもよく、エネルギーにあふれ、私が初めて会った頃のように、笑顔がキラキラと輝いていた。奥深いダークブルーの色を浮かべたような眼差しは、人には理解できないような深みを帯びていた。だれがあなたのことを理解できるというのでしょう?
ドアが開いて、入ってきた人がいた。男の人だった。私は直感的に、彼が赤ちゃんの父親だと思った。彼は長い間、夢の前に立ちつくし涙を目に浮かべていた。
彼が近づいてきて、私に一通の手紙を手渡した。
「あなたがSUMMERさんですね。これは夢が私にことづけたものです。彼女はもう自分の身に何かあるのがわかっていたようで、私からあなたに渡してくれるように言っていました。」
written by 默默般奔pao
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003080817171643
≪未完の夢【第6回】≫
2003年11月6日 夢が帰ってきた。私が帰宅すると、台所に明かりがついていた。一歩一歩玄関に近づいて行き、立ち止まった。深呼吸をして、ドアを開けた。彼女だった。やっぱり彼女だった。夢は言った。
「おかえりなさい。ご飯できてるわよ。手を洗って食べてね。」
私はボーッとしたままテーブルまで行った。いったいこれが夢なのか現実なのか、はっきりわからなかった。彼女がいなかった日々は、洗い流されたように、跡形も残っていなかった。しかし事実はこれが現実であることを証明していた。夢は
「私、妊娠しているの。」
と言った。
「この子の父親が誰かは聞かないでね。私、この子を産むわ。」
私は自分の聞いたことのないような声を聞いた。
「あなたが帰ってきてくれただけで充分よ。子供は私たちがいっしょに育てましょう。」
夢は雨と風のまじる夜、子供を産んだ。彼女の低いうめき声が始まり、豆粒大の汗を顔に浮かべながらもがくのを見ているだけで、私はなすすべもなく、慌てふためいて120番に電話した。救急車が来るのを待つ間、私は夢の手をしっかり握っていた。彼女の手は氷のように冷たかった。私は彼女の痛みがどれだけのものなのかからだで感じていた。
彼女の爪はもう私の肉に食い込んでいた。しかし私にはどうしようもなかった。しっかりと彼女を抱きしめるだけだった。
「神様、あなたの痛みを私にも分けてください。私もあなたと同じ目にあわせて!」
私は彼女に大声で呼びかけるしかなかった。
「夢、夢、頑張って、私たちまだいっしょに生活していかなきゃならないの、私たちまだいっしょに子供を育てて行かなきゃならないのよ。絶対に頑張りつづけるのよ!」
私は顔いっぱいに涙を流していた。
夢は手術室に入れられた。
手術室の外にすわっていた。心の中は何がなんだかわからなくなっていた。医者と看護士が何度も出たり入ったりしていた。ドアが開けられるたびに私はビクビクした。廊下は人気がなく、さみしく音が鳴り響くだけだった。手の傷からは血が流れつづけていた。私は真っ赤な血がポタポタと流れ落ちるのを、一滴一滴見つめていた。輪廻のように、地は流れて、また戻ってくるの?いったい誰のところへ?
失ったあと、また取り戻すことができるの?私は夢が目の前に立っているのを見た。微笑みながら、ずっとずっと微笑みつづけていた……
written by 默默般奔pao
http://wind.yinsha.com/letters/show.phtml?aid=2003080817171643
「おかえりなさい。ご飯できてるわよ。手を洗って食べてね。」
私はボーッとしたままテーブルまで行った。いったいこれが夢なのか現実なのか、はっきりわからなかった。彼女がいなかった日々は、洗い流されたように、跡形も残っていなかった。しかし事実はこれが現実であることを証明していた。夢は
「私、妊娠しているの。」
と言った。
「この子の父親が誰かは聞かないでね。私、この子を産むわ。」
私は自分の聞いたことのないような声を聞いた。
「あなたが帰ってきてくれただけで充分よ。子供は私たちがいっしょに育てましょう。」
夢は雨と風のまじる夜、子供を産んだ。彼女の低いうめき声が始まり、豆粒大の汗を顔に浮かべながらもがくのを見ているだけで、私はなすすべもなく、慌てふためいて120番に電話した。救急車が来るのを待つ間、私は夢の手をしっかり握っていた。彼女の手は氷のように冷たかった。私は彼女の痛みがどれだけのものなのかからだで感じていた。
彼女の爪はもう私の肉に食い込んでいた。しかし私にはどうしようもなかった。しっかりと彼女を抱きしめるだけだった。
「神様、あなたの痛みを私にも分けてください。私もあなたと同じ目にあわせて!」
私は彼女に大声で呼びかけるしかなかった。
「夢、夢、頑張って、私たちまだいっしょに生活していかなきゃならないの、私たちまだいっしょに子供を育てて行かなきゃならないのよ。絶対に頑張りつづけるのよ!」
私は顔いっぱいに涙を流していた。
夢は手術室に入れられた。
手術室の外にすわっていた。心の中は何がなんだかわからなくなっていた。医者と看護士が何度も出たり入ったりしていた。ドアが開けられるたびに私はビクビクした。廊下は人気がなく、さみしく音が鳴り響くだけだった。手の傷からは血が流れつづけていた。私は真っ赤な血がポタポタと流れ落ちるのを、一滴一滴見つめていた。輪廻のように、地は流れて、また戻ってくるの?いったい誰のところへ?
失ったあと、また取り戻すことができるの?私は夢が目の前に立っているのを見た。微笑みながら、ずっとずっと微笑みつづけていた……
written by 默默般奔pao
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≪未完の夢【第5回】≫
2003年11月5日 夢は行ってしまった。朝早く起きてみると、彼女はいなかった。そのとき私は裏切りの味を知った。そしてその痛みを知った。
結局私は神様ではない。結局すべてをコントロールすることなどできていなかったのだ。
ただ、自らをあざけるように笑うしかなかった。
以前と変わらず平静な日々が続いた。私の心の中に吹き荒れている嵐などだれも知ることもなく。
4年あまりの努力はすべてひとつの目標のためだった。今、その目標からも見放され、私はどうやってこんなことを続けていったらいいのだろう?
考えてみれば、私は夢のことを理解したことなど今まで一度もなかった。7年前の花火の夜、私が彼女の目の中に見つけた計り知れないもの。当時の私には理解するすべなどなかった。今日初めてわかった。彼女が私よりずっとしっかりと自分の考えを持ち、私よりずっと強かったということが。
私は思い出に頼ってやっとのことで呼吸していたが、途切れることなく高校時代の場面を思い出していた。彼女の花火に照らし出された顔、木の下の男の子、山のように積まれた手紙、そして、私はあのときのことを受け入れの返事だと信じこんでいた。私はあの微笑の意味を理解することができた。はっきりとした返事ではなかったのだ。
彼女は残酷にも私を幻の世界から現実へと引き戻してしまったのだ。
いつも夜中に飛び起きてしまう。夢の中ではあの美しく、まつげがきれいで、ちょっと微笑んだ女の子に会う。そして、そっと私に語りかける。
「今、木の葉と話していたの。」
日の光が私の目に刺しこみ、突然パッと目がさめる。真夜中の夢に戻ると、夢が帰ってくる途中であるような感じがした。
written by 默默般奔pao
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結局私は神様ではない。結局すべてをコントロールすることなどできていなかったのだ。
ただ、自らをあざけるように笑うしかなかった。
以前と変わらず平静な日々が続いた。私の心の中に吹き荒れている嵐などだれも知ることもなく。
4年あまりの努力はすべてひとつの目標のためだった。今、その目標からも見放され、私はどうやってこんなことを続けていったらいいのだろう?
考えてみれば、私は夢のことを理解したことなど今まで一度もなかった。7年前の花火の夜、私が彼女の目の中に見つけた計り知れないもの。当時の私には理解するすべなどなかった。今日初めてわかった。彼女が私よりずっとしっかりと自分の考えを持ち、私よりずっと強かったということが。
私は思い出に頼ってやっとのことで呼吸していたが、途切れることなく高校時代の場面を思い出していた。彼女の花火に照らし出された顔、木の下の男の子、山のように積まれた手紙、そして、私はあのときのことを受け入れの返事だと信じこんでいた。私はあの微笑の意味を理解することができた。はっきりとした返事ではなかったのだ。
彼女は残酷にも私を幻の世界から現実へと引き戻してしまったのだ。
いつも夜中に飛び起きてしまう。夢の中ではあの美しく、まつげがきれいで、ちょっと微笑んだ女の子に会う。そして、そっと私に語りかける。
「今、木の葉と話していたの。」
日の光が私の目に刺しこみ、突然パッと目がさめる。真夜中の夢に戻ると、夢が帰ってくる途中であるような感じがした。
written by 默默般奔pao
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